
上州すなわち群馬の山ばかり登っている人がいると聞いたことがあります。たしかに妙義山など峨々たる山並みは他所で類するものがなくそんな気持ちもわかります。そんな上州の山の中でも人気の山が荒船山です。その山容は「不沈空母」とも称される通り堂々たるものです。
今回はそんな荒船山を電車とバスでアプローチし、北から南へ(三ツ瀬から羽根沢へ)縦走しようと企てました。
■上州・荒船山 2024/6/1
三ツ瀬バス停(9:15/12:05)荒船山(12:10/15:35)羽根沢バス停
上信電鉄・下仁田駅からバスで三ツ瀬へ
高崎からおよそ1時間、上信電鉄に揺られると下仁田駅に到着しました。昭和感が漂う木造1階建のこの駅舎に思わず写真を撮ってしまいます。あとから聞きますと、いろんな映画やTVのロケ地として活用されているそうです。わかるわー。
下仁田駅から町のバスに乗り込みます。乗客は私1人です。下仁田というと「下仁田ネギ」くらいしか連想できなかったのですが、運転手さんと話していると、下仁田は飲食店が人気でそれを目当てに遠くから来る人がいるとか、本宿のドーナッツが有名だとか。こないだも「鶴瓶の家族に乾杯」がロケで来ていたし、「孤独のグルメ」もロケしているそうです。そして、そんな時は決まって急に行列ができているそうです。
話をしているとあっという間に三ツ瀬バス停に到着です。9時15分。
三ツ瀬から艫岩(ともいわ)へ
さてバス停からしばらく行きますと相沢(あいざわ)という集落に入り、すぐに登山口に到着しました。駐車場には車2台とバイクが1台停まっていました。家を出る前(午前4時過ぎ)にご飯を食べたのですが、流石にお腹が減りました。ここでチョコとクリームの「二色パン」を食します。山ではカロリーを欲するのか、こういう子供っぽいパンを食べたくなるのです
登山口からは杉林を登ります。大きく足を上げるような道でなく、足運びに優しい道ですので辛くはありません。尾根に上がると出迎えてくれたのがこれです。
この道には地元の人たちによる道標や、こうした工作物が所々にあって和んでしまいます。
その先も杉林と天然林の林が交互に現れます。
杉林が終わって天然林になるところが、空がやや開いてシダが茂っていました。その中でクリンソウを見つけました。お寺のてっぺんの九輪からと言われていますが、なるほど花がつくとそうですね。頂上台地でも「群生地」の標識がありましたので有名なのかもしれません。私は全然知りませんでしたけど、見頃はあと少しというところでしょうね。
やがて尾根上に岩が点在しているなと思ったら、目の前に大きく張り出した岩が現れました。「中の宮」です。こういう大きな岩を見ると、どうしても「登った人がいるだろうか」と不謹慎なことを考えてしまうのが悪いくせです。もちろん地元の人にとって大事にしている岩だからやめたほうがいいです。
時計の高度計を見て「あと100メートルは登らないとなあ」と思っていると、階段が現れました。ここまで登りやすい道が続いていただけに辛く感じますが、距離はそれほどでもありません。
それよりも「ここを登りきるといよいよ頂上台地か」と期待がふくらむところです。
階段を登りきるとパッと大地が開け、道標に従って右に進路を取ります。楽しげな人の声がいくつも聞こえてきます。やがて避難小屋が見えました。
その先が明るく大きく開け、それはその先が断崖となっていることを表しているのです。
おー!これが艫岩(ともいわ)かー!
浅間山が正面に見えました。
そんな位置関係だったっけ?頭の中で地図を思い浮かべますが、今だによくわかりません。関東は山がいっぱいありすぎて、今だに概念が覚えられません。でもまぎれもなく浅間山です。
断崖のヘリに近づくとお腹のあたりがグルグルと変な感じになって近づけません。よくこれで若い頃岩登りをしていたなあと我ながら思うのですが、ロープをつけていると全然違うのは何故なんでしょうねw
艫岩の負の側面が、漫画アニメ「クレヨンしんちゃん」の作者が転落死したことです。「注意喚起」を呼びかける張り紙が多く見られました。地元の方々が遭難防止に苦心するのもわかります。
荒船山の頂上大地は、新緑の超癒しポイントです!
昼食をとる時間で、皆さんお湯を沸かしてラーメンタイムといったところですが、私は次のミッション「南牧(なんもく)村に下山する」があるので、さっさと艫岩を後にします。
頂上台地はヒグラシの蝉しぐれとカエル(だと思う)の合唱で初夏の感じがいっぱいです。とても気持ちの良い林でした。そして本当にこの辺りは真っ平らなのです。
星尾峠への分岐を越えて荒船山へ向かいます。この登りは短いながらも足を大きく上げるところもありますが、荒船山は二百名山でもあります。ここは頑張って登り切りましょう。
しかし展望がない…w
先ほどの分岐まで戻り星尾峠へ向かいます。
威怒牟畿(いぬむき)不動を経て南牧村へ
今回、星尾峠から国土地理院地図で黄色の「県道」である路を採用して、途中から威怒牟畿(いぬむき)不動を経由して線ヶ滝へ降りようと計画していたのですが、これがなかなかの「険道」でございました
星尾峠を過ぎてロープを伝って急な路を降りると、踏み跡が一気に薄くなりました。それでもなんとか下の標識まできました。下の写真は来た方を振り返ったところです。
さあここから「県道」を離れ、遊歩道となります。道は沢の中を渡ったりするのですが、さすがに何度か道を見失いました。ピンクのテープ(親切とは言えない。ごめんなさい)が頼りです。ルートファインディングの力を試されているようです。
沢から左手のやや開けた尾根の末端に出て左に小さな滝を見送って、かすかな踏み跡をたどって右上していくとやがて岸壁帯に遮られ、その裾を右に右に進んでいくと沢を渡ったところで道が確かとなって、突然東屋が現れました。はーよかった
道標には朽ちているのか、わざと外しているのか標識がありません。この道はいまは廃道扱いなのかしら?
そこからは(これまでがこれまでだけに)快適な道となって、次の訪問ポイント「威怒牟畿(いぬむき)不動」へ。分岐から「300メートル」上がってご対面です。
スクリーンのような大きな岩場に水が落ちています。岩の下には木の人工物があって宗教施設のようです。案内板によると「大正初期までは近郊の参詣者多く(中略)この地を訪ね祈れば諸願成就する」とのこと。こんな山奥まで参詣に来るとは、いつも思うことですが、信仰心とはすごいものですね。
ようやく登山口まで降りてきました。時間は14時半です。線ヶ滝を前にしてやっぱり少し寄り道です。断層に滝があるとのこと。見事なくらい一直線の滝がいさぎよいです。
そこからはアスファルトの道を1時間です。途中に星尾温泉がありました。新しそうなのぼりに「11〜18時」と書いてあったので日帰り入浴もできたのかもしれませんが、時間もないのでスルーしてしまいました。
15時半頃、バス停手前の南牧(なんもく)の民族資料館に寄ると、この村が上州と信州をつなぐ地域であったこと、こんにゃく作りや養蚕、紙漉きが盛んだったことなどがわかります。昔の方が地方は産業があって、活気が伺えました。
資料館の係の女性が「南牧は高齢化が進んでいますが、みんなすごく元気なお年寄りばかりなんです」と嬉しそうに話していたのが印象的でした。
16時8分のバスに乗って下仁田駅へ。車窓から山並みを眺めていますと、バスの運転手さんが「いまは木を植えてしまっていますが、昔は山の稜線近くまで段々畑が続いていたんですよ」とのことでした。
運転手さんから聞き出した下仁田駅近くの人気飲食店(ラーメンの一番や、すき焼きのコロンビア、きよしや食堂)でご飯を食べたかったけれど、どこも開いてなくて、16時56分の上信電鉄に乗って帰路につきました。
北から南まで繋いだのは充実感もあっていいと思うのですが、このルートの欠点は荒船山の荒船山らしい写真が撮れないことですね。妙義山から見た荒船山の写真を添えておきますね。

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