
鈴鹿山脈は滋賀県と三重県の県境にあって、ピークは御在所岳や鎌ヶ岳に代表されます。ロープウェイがあったり湯の山温泉があったりメインルートは三重県側に譲りますが、滋賀県側は渓谷が深く刻み山深くて安易に山に近づけないぶん、人に会うこともあまりなく静かな登山が楽しめます。
そんな中、東近江市が市制10周年に「鈴鹿十座」を平成27年に制定しました。御池岳、藤原岳、竜ヶ岳、釈迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳、イブネ、銚子ヶ口、日本コバ、天狗堂の十座で、選定には有名な山だけでなく、森林資源や水資源を次世代に継承していくためとの願いが込められています。
今回はそのうちの3座、雨乞、イブネ、銚子ヶ口をテント泊公共交通利用で巡ろうという計画です。3座のうち特にイブネは苔の広がる庭園のような大地が人気を呼んでいます。
鈴鹿・甲津畑〜雨乞岳〜イブネ〜杠葉尾 2025/5/3~4
1.甲津畑(10:15/13:25)杉峠(13:25/14:00)雨乞岳(14:05/14:30)杉峠(14:30/14:45)杉峠下のテン場
2.テン場(4:45/5:05)杉峠(5:05/5:50)イブネ(5:50/6:25)銚子(6:25/8:20)銚子ヶ口(8:20/10:08)杠葉尾の登山口
公共交通機関でアプローチ 八日市駅から近江バスと東近江市の「ちょこっとバス」

JR近江八幡で2両編成の近江鉄道に乗り換え、八日市駅へ行きます。道中、大きな岩山が見えてきました。太郎坊宮です。たくさんのハイカーが下車していました。前から気になっていたのですがアプローチ方法がわかったので「いつか登る山リスト」に載せておこう。
八日市駅前は想像より立派なのでびっくりしました。駅前道路もきれいだし、スーパーや飲食チェーン店もあって、ベッドタウンという感じでした。
近江バス御園線に乗って山上(やまがみ)というバス停で下ります(640円)。ここには八百亀というスーパーがあり、食料品の買い忘れの補充に便利です。ちなみに日本酒は地元酒蔵の喜楽長、肉はもちろん近江牛、魚屋さんも入っているなかなかよきスーパーです。

東近江市のちょこっとバスの甲津畑行きに乗ります。乗客は私のみ。運転手さんによると、こうしたコミュニティバスも運営が大変なんだとか。高齢化が進み、外に出歩く回数が減っているそうです。下車すると「気をつけて」と運転手さんが声をかけてくれました。「乗って残そう」の少しでも力になれば…

歴史ある千草街道は織田信長や蓮如上人の逸話だらけ アナグマ出現!
このバス停の向かいに立派な松があります。織田信長が休んだときに馬の手綱をこの松にかけたのだそうです。これから登る杉峠への道は千草街道として多くの逸話が残されていて、以後の道中も楽しかったです。

おっと、忘れてはいけません。滋賀名物の「飛び出し坊や」です。


45分歩いて、午前11時にやっと登山口に着きました。マイカー登山の方は、ここらの林道に縦列駐車しているようでした。道標ではここから杉峠まで3時間とのこと。雨乞岳アタック後の幕営を考えているので急がないと。

幅広い道を快調に歩いていると、前方からとことこと近づいてくる小動物がいます。全くこっちを気にしていません。アナグマですね。体長50センチくらいで、ずっと下を向いて何か探しているようです。20メートルくらい近づいてようやく私に気づいたときの顔がこちらです。

このあとのそのそと藪の中に逃げ込んでしまいました。流石にやばいと思ったのですかね(笑)
道は広々としていて谷沿いを緩やかに登って行きます。この水がきれい!鈴鹿の沢という感じがします。

水はきれいのですが、前日降った雨でいささか増水しているのか、たびたび渡渉を強いられます。下の写真では木の橋が老朽化して通行止となっており、ここでも渡渉となりました。飛び石でなんとかなる程度ですが、失敗したら登山靴が水没する深さがあるので注意して通過しました。

千草街道には、織田信長を狙撃した杉谷善住坊が隠れたと言われる岩のほか、蓮如上人の逸話もあります。真宗の興隆と親鸞上人の評判の高まりから、天台宗の比叡山衆徒に追われ、親鸞聖人は西明寺から千草街道に入り、この付近にある炭𥧄に身を隠して難を逃れたとの逸話が残っているそうです。

やがて古木並木というところにさしかかりました。ブナ並木として市の天然記念物に指定されています。平成6年の調査ではミズナラ、カエデ類、クマシデなど計68本の古木が350メートルに渡って確認されたそうです。倒れている木もありますが、あまり人の手を入れずに保全されているように感じました。

杉峠の近くに「?の水」という水場がありました。これは貴重ですね。

13時半に杉峠に到着しました。この枯れた木がいわれとなった杉だったのかな?
峠には流石にハイカーが5人ほど休んでいました。このまま向こう側の谷筋に降りたところが、本日幕営予定の飯場跡です。ここは右に進路をとり、雨乞岳を目指します。なんといっても鈴鹿十座、鈴鹿セブンサミットの一座ですから、登っておきましょう。

杉峠から急登を登りきると前方が開けました。なだらかな尾根が続いています。
雨乞岳は展望よし この日は杉峠の下でテント泊


振り返ると杉峠をはさんで中央に佐目峠、右にイブネを見下ろすことができました。イブネから左に伸びている稜線が大峠の方に伸びている稜線かな。谷を超えた先の左の稜線は日本コバでしょうか?

山頂付近に雨乞い神事が行われた大峠の澤と呼ばれる池があります。モリアオガエルが生息するそうです。
この池はどんな時も干上がらない不思議な池だそうです。こんなに山頂近くなのに?

雨乞岳1,233mに到着しました。鈴鹿の盟主、御在所岳と鎌ヶ岳が並んでいます。山並みの向こうに見えるのは三重県の四日市の街並みでしょうか。


東雨乞岳には多くの登山者が見えます。雨乞岳には武平峠に車を停めてピストンする人が多いようですね。東雨乞岳の人たちは武平峠への帰路の方でしょうか。私も湯の山温泉から入山することも考えたものの、上り下りがありそうなので今回はやめました。

雨乞岳から杉峠に戻り、そこから御池鉱山跡方面への谷あいに下りて15分ほどで、飯場跡と呼ばれているところに到着しました。ここは平坦だし水もあって良い幕営地でした。
ここでもアナグマがやってきて土の中をほじくりまくっていました。彼らは穴を掘っているときは本当に夢中で、人間がいることを無視しているようでした。冬眠明けでお腹がへっているのかな?

夕食はウイスキーにおつまみ、それにドライカレーのジフィーズで16時半には終了です。う〜ん、こういう時ラジオでもあるといいんだけど、忘れてしまった。結局寝れたのは20時前でした。
ガスのイブネは幻想的 杠葉尾へ
翌朝は予報通り、曇りでした。出発を遅らせることも考えましたが、杠葉尾(ゆずりお)のバスの時間も気になるので、4時45分に出発しました。

杉峠から上がり、佐目峠を越えると途中からコケのふかふかが始まってテンションが上がります。「これ天気が良かったら最高だろうな」

やがて5時50分にイブネの山頂に到着しました。山頂といってもダラーんとしたところです。

あとで道の駅 奥永源寺渓流の里にある鈴鹿十座ビジターセンターの方に教えてもらったのですが、この辺りは20から30年前までは背丈ほどのススキがおいしげっていて「イブネは藪漕ぎが好きな人しか行くことがない山だった」そうです。それが数十年に一度のススキの枯れる時期と、温暖化の影響でシカが越冬して芽を食べ始めた時期が重なって、コケの平原になったそうです。



いやあ、確かに苔の大地ってこれまで見たことあったかなー?ちょっと覚えがありません。
とは言え、ガスっているので、写真撮影もそれほど熱が入らず(笑)、クラシへ…しかし何もない山頂です。

さらに銚子へ。ここはだだっ広ーいところでした。ここから銚子ヶ口までは破線の道のりです。気合いを入れ直して参りましょう。


銚子から大峠の頭まて尾根が細く急峻で気が抜けません。

大峠の頭から道が明瞭になり、ようやく大峠につきました。ここには池への分岐がありますが、この時点では時間に余裕がないと思っていて、立ち寄らずでした。

そこからは小刻みにピークを越えて、この日初めて杠葉尾から来た人とすれ違った直後に銚子ヶ口に着きました。

残念ながら展望なしです。この辺も立木が少なく広々とした風景が楽しめるはずなのですが。
そこからは延々と下山への道のりです。何人かの人とすれ違いますが、地味に登りが続いてこたえるとの声も聞かれました。結局10時半ごろに登山口に到着しました。

登山口の金網には2キロ離れた道の駅での駐車が推奨されていました。登山口には数台なら駐車可能ですが、2キロはしんどいなあというのが本音ですかね。
とかいう私は時間があるので道の駅まで歩き、お土産に地元の酒蔵、喜楽長の日本酒を求めました。

ちょこっとバス政所線の道の駅発は11時56分。帰りは山上でまた乗り継ぐのですが、大桝屋という酒屋さんが少し歩いたところにあり、勧められるままに「松の司」を買ってしまいました。帰りの方がリュックが重たい(笑)
名神八日市で下車して京都まで。

イブネから銚子ヶ口までガスったのは残念ですが、やっぱりソロのテント泊っていいですね。新緑の季節になって行動範囲が広がるのを実感します。
何と言ってもヒルの被害が出る前に行くことができて良かった(笑)
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