
石鎚山 土小屋から コースタイムと公共交通アプローチ
愛媛県の石鎚山は西日本で一番高い山で、日本百名山でもあります。深田久弥は「わが国で最も古くから讃えられた名山の一つで、「日本霊異記」にその名前が現れている」と紹介し、自らは10月半ばに面河渓(おもごけい)から登山しています。
たくさんのコースがありますが、公共交通を使っての登山としては限られていて、ロープウェイを使うのが最もポピュラーでしょう。深田久弥が登った南面の面河から登るルートも組めますが、やや長くなります。
せっかく公共交通を使うなら入山と下山を別にしたくなりますよね。土小屋(つちごや)コースは、アップダウンも少なく行程が短いためマイカー派に人気の登山コースですが、土小屋には土日祝に限って、バスが運行されています。伊予鉄南予バス「石鎚土小屋」で検索してください。本数は限られていますが、松山駅発6時半の便に乗り、ロープウェイ駅まで行くことができれば日帰りも可能なはず。
頂上山荘のHPによると「土小屋〜弥山は2時間15分」「弥山からロープウェイ山麓下谷駅は2時間23分」弥山と天狗岳の往復を余裕見て40分とすると、およそ5時間半の行程となる。実際は下のコースタイムでした。
■四国・石鎚山 2025/6/1
石鎚土小屋(9:45/11:15)二の鎖元小屋で合流(11:15/11:35)弥山(11:45/12:00)天狗岳(12:00/12:15)弥山(12:15/13:55)成就社(14:00/14:15)ロープウェイ山頂成就駅(14:20/14:28)ロープウェイ山麓下谷駅
■アプローチ
行き:
JR四国バス「久万高原」行き松山駅6時半発久万中学校下車1,340円(webチケットで1150円)。
伊予鉄南予バス「石鎚土小屋」行き終点下車1920円。※石鎚土小屋行きは土日祝のみ。
帰り:
ロープウェイは繁忙時を除き、0分、20分、40分で運行
瀬戸内バス「ロープウェイ前」からJR伊予西条駅へ
参考:
6時半のバスに乗るため私は松山に観光も兼ねて前泊しました。また大阪・神戸からは伊予鉄の夜行バスが利用できます。その場合「大街道」で乗り換えするのが良さそうです。(2025年6月時点)

JR松山駅からバスを乗り継ぎ「石鎚土小屋」へ

午前6時半、JR松山駅から1本目のバス、久万(くま)高原行きのJR四国バスに乗ります。通常運賃は1.340円ですが、久万高原線1日フリーパス1.150円のチラシを見つけ、即スマホで購入しました。片道だけで元が取れるお得切符です。乗客は数名でお遍路の格好をした人など数名でした。
乗り継ぎは久万中学校前駅でJR四国バスを降りると、そこは伊予鉄南予バスの久万営業所でした。建物にはローソンがあってトイレをお借りしました。8時に久万営業所を出発。乗客は私含めて5人でしたが、岩屋寺のバス停で4人降りました。ここは四国八十八ヶ所霊場めぐりの札所で、名前のとおり岩塔が立ち並ぶ秘境感溢れるお寺のようです。

それから1時間20分ほどは私一人となりました。予想をしていたとはいえ、公共交通を利用して土小屋から登る人は少ないようです。運転手さんにお客さんは少ないんですね、と聞くと「この路線はいつもこういう感じですよ」とのこと。バス路線の維持は大変でしょうから、いつまであるかわかりませんね。
面河渓からは石鎚スカイラインをぐんぐん登っていきます。途中、御来光の滝がちらりと見えました。写真におさめかったな。午前9時39分に石鎚土小屋バス停に到着しました。ここは宿泊施設があるほか、モンベルのショップがあります。時間がないのでお店は寄っていませんが。土小屋は標高は1.492m(「いよのくに」の語呂合わせあり)あって、すでにかなり高度を稼いでいます。
トイレをすませて、さあ出発です。
土小屋からのルートは、なだらかで展望が良いルート

石鎚神社土小屋遥拝殿でお参りして車道を歩きます。左手のウラジロモミの群落が見事です。この車道の先には国民宿舎があります。上の写真で真ん中のぽっかり穴が開いているように見えるのが登山口となります。

登山口には「この先1.2kmの地点で大規模な落石があり、登山道が大きく崩れています」とあり注意を呼びかけていましたが、私どこが落石地点なのかわかりませんでした(笑)。
登山道はやがてきれいなブナ林となりました。ブナの果実は5〜7年ごとに大豊作となるといわれていますが、豊作年にはネズミなどの動物に食べ残される率が高まり、子孫を残す可能性が高まるのだそうです。

ほとんど汗を掻くこともなくちょっとした広場に着きました。名前は「ベンチ1」です。なんとお役所的なネーミングなんでしょう。

ここで天狗岳が見えてきました。青空に映えてますね。岩壁と新緑のコントラストがとってもきれいです。稜線も緑の草原状となっていて、いかにも気持ち良さそうです。


「ベンチ2」を経て「ベンチ3」へ。


ベンチ3を過ぎたところから、天狗岳の北壁下のトラバース道となります。途中何ヶ所か崩れているところがありました。登山口の注意箇所より距離があるのでここではないと思うのですが、注意する場所ではあります。雨の日などはやはり落石注意でしょうね。


ニノ鎖、三ノ鎖を登って弥山の頂上へ
北壁下を横にトラバースしていくと、人の声が聞こえてきて、ひょっこり鳥居前に出ました。ロープウェイからの道との合流点「ニノ鎖元小屋」です。石段を上がると立派なトイレがありました。これより上は公衆トイレはないのですませておきましょう。

トイレの上からは鎖場が出てきます。自信のない方は迂回路を使いましょう。
山頂への参道には「鎖の行場」で名高い試しの鎖、一之鎖、二之鎖、三之鎖がかけられています。鎖の合計距離は約230メートルになり、険しい岩場にかかるこの御鎖にすがる時こそ、邪心を捨て、無我の境地を体験する、まさに命がけの行場となります。(石鎚神社HPより)
いかにも修験の山という感じのデカイ輪っかのついた鎖です。場所によっては輪っかに靴を入れて登ることもできますが、一番安定して登れるのは岩場にスタンスを求めることだと思います。三点支持をしっかりと、です。何ヶ所かは腕づくで登りました。

続いて三ノ鎖です。ここではぶっといトライアングル状の鎖にあぶみのようにして登っている女性もいました。バランスをとるのが大変そうでした。
高度感も出てきて後ろを振り返ると、けが人が出ないのが不思議に思える懸崖です。まさに「邪心を捨て、無我の境地」を体験する瞬間です!


三ノ鎖を登ると、ひょっこり石鎚神社の社の裏に出ました。弥山の頂上です。白装束の方もいて、神事を受けている方がいました。

石鎚山最高点は天狗岳の1,982m

日本百名山の作者、深田久弥は弥山に登った後、次のように続けています。
一般参詣者はここを石鎚の頂上としているが、四国最高の地点に立つためには、更に天狗嶽という岩峰まで行かねばならぬ。ここの方が弥山より約二十米高い。
国土地理院の地図をみると、弥山1,972m、天狗岳1,982mで10mしか差はないのですが、天狗岳が最高点には間違いありません。私も「行かねばならぬ」です(笑)
弥山は流石に人が多くて、天狗岳をバックに写真を撮る人が後を絶ちません。そんな中、「すみません、すみません」と人をかき分けて天狗岳への稜線に降りる鎖場へ行きました。
天狗岳への稜線は左側が鋭く切れ落ちています。基本は稜線の右側に登路を求めるのですが、降り口以外は鎖はありませんので、三点支持を意識しながら進むことになります。

ところどころにちょっと身体が飛び出すように感じるところもあるので、ちょっとビビります(笑)

時間にすると15分くらいで天狗岳の山頂に着きました。山頂は狭くて数人が精一杯です。下の写真で右側に見える東尖峰です。写真を数枚撮って弥山に戻ることにします。


弥山に戻ると、さっきより人が増えたような気がします。ものすごい人数です。さすが日本百名山。

頂上山荘の左横を通って、迂回路で下山することにします。迂回路はほとんどが空中に飛び出した金属製の階段で「お上りさん」「お下りさん」と道を2つに分けています。
ちなみに石鎚山系公式WEBサイトで「登山者に出会った場合、相手が下りなら「おくだりさんで」、相手が上りなら「おのぼりさんで」という独特の挨拶があります」と書いていますが、この日はこのように挨拶する方はいませんでした。お参りの人独特なんですかね。

弥山からの下りは2時間半見ていたのですが、かなり時間を短縮できそうだったので、「試しの鎖」という鎖場も登ってみました。上り48m、下り19mの鎖があります。道中「試しの鎖が一番難しかった」という声をよく聞いたのですが、下りの鎖場があることで難しい印象になるのではないですかね。
下の写真は下りの鎖からすぐの前社ヶ森売店小屋。冷やしあめゆ(¥500)が推しのようでした。

やがて成就社に着きました。なんか、すっかり終わった感じがしましたが、ここからロープウェイ駅へは20分ほどの下りがまだあります。お参りしてから、下の写真で右に折れてロープウェイ駅へ。

14時15分過ぎに山頂成就駅に到着しました。ちょうど15時20分の便があったので、1200円の片道キップを買って乗り込みました。


乗車時間はたったの8分。なんだかんだ言って文明の利器にあやかっております。

伊予西条駅へ向かう瀬戸内バスは15時17分発なので、まだ45分ほどあります。ちょっと外人っぽい話し方の温泉の従業員に声をかけられ、日帰り温泉によります。そんなに大きな浴場ではありませんが、白濁した温泉でさっぱりすることができましたし、着替えられたのでよかった。

伊予西条には大阪方面へのバスの便もあるようですが、翌日は仕事もあるのでJRの特急「しおかぜ」と新幹線に乗って帰りました。速さを優先させたのですが、新幹線の自由席は立ちでした。日曜日夕方は混んでいるのですね、やっぱり。

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