谷川主脈2日 素晴らしい稜線とはこのことだな 

,

たおやかな平標山 背後に苗場山が見える
縦走の最後に出会った風景 たおやかな平標山と背後に苗場山が見える

 谷川岳に登ったのは2022年3月。積雪期とはいえ天神平からの往復で、ネームバリューと比較的手軽な雪山登山の差にアンバランスさを感じていました。その時に「あの稜線ええなあ」と眺めたのが谷川連峰主脈と呼ばれる稜線でした。雪がなくなったら一度あそこを歩いてみたい。そしてその時は西黒尾根から登るのがいいのだろうなとぼんやりながら考えていたのでした。そして「行くなら今だな」と実行に移した2024年5月の山行です。

JR上越線の土合駅はモグラ駅として有名
JR上越線の土合駅はモグラ駅として有名

 高崎線、上越線を乗り継いで土合駅に到着します。モグラ駅の階段を黙々と登ります。土合の階段を上るのは白毛門以来2回目で、もう要領を得たものです。明るい地上に出たら駅を出て右のトイレで用を済ませ、準備を整え出発するともう午前9時です。先は長い。急がねば。

ロープウェイ駅には様々な遭難碑がある
ロープウェイ駅には様々な遭難碑がある

 ロープウェーの土合口駅を通り過ぎてすぐに谷川岳山岳資料館がありました。資料館前には群馬県岳連の八木原圀明さんの写真パネルがありました。群馬県岳連といえば、すぐにエベレストBCで「ひだまり肌着」を着込んだ、例の登山隊がずらりと並んだ写真が思い出されますね(笑)知らない方は一度検索してみてください。インパクト大ですよ。

谷川岳山岳資料館
谷川岳山岳資料館 昔の岩登りの道具などが展示され時間があればじっくり見てみたい。入り口左に八木原さんのパネルあり

 林道を行くとまもなくで西黒尾根入口です。日本三大急登の一つと言われているのですが(あと2つは烏帽子岳のブナ立尾根と甲斐駒の黒戸尾根)、のっけからいきなりの先制パンチを受けました。鉄塔下まで上り詰め、ちょっとは緩やかになるかなと期待したのですが、「三大」をバカにしてはいけません。急登は止まりませんから。

谷川岳 西黒尾根登山口
西黒尾根登山口 ここから急登が始まった

 樹林帯を抜けパッと展望が開けると、天神平のロープウェーの施設を見下ろすところまで上がって来てました。「わー」と思わず声を出した後に、休憩中のご夫婦らしい方に気づきました。ちょっと気まづかった…

谷川岳 ロープウェイ駅が見える
ロープウェイの天神平駅が見える

 対面には白毛門から続く馬蹄形の山々、上州武尊山、赤城山が見えます。しかしいい天気だな〜

馬蹄形の山々の向こうに巻機山や越後駒が見える
馬蹄形の山々の向こうに巻機山や越後駒が見える
上州武尊山がかっこいい
上州武尊山がかっこいい

 荒々しい谷川岳東面が見えますが、本チャンのクライミングで有名な一の倉沢などはここからは見えません。いつかは見たいですね。クライミングとして登りに来るのはちと無理でしょう、さすがに。

くさり場が出て来た
くさり場が出て来た
谷川岳東面
谷川岳東面

 ラクダの背の前後から岩場がぐっと増え、黄色いペイントを目印にどんどん高度を上げていきます。

谷川岳西黒尾根らくだの背
西黒尾根らくだの背
谷川岳西黒尾根らくだの背を行く登山者
西黒尾根らくだの背を行く登山者

 蛇紋岩と呼ばれる岩は登山者によってつるつるに磨かれ、靴底が擦れて黒くなっているところもありました。この岩滑りやすいので有名なんですよね。尾瀬の至仏山でもありました。

蛇紋岩で靴底が削られ黒ずんだ岩
蛇紋岩で靴底が削られ黒ずんだ岩

 きょうは晴れて岩がよく乾いているからなのか、下山ルートに使う人が多いのが意外でした。私はこの下りはちょっと嫌だな。
 尾根の突き当りを登りきると雪渓が現れました。キックステップで登って天神尾根と合流です。

雪渓が現れると谷川岳西黒尾根も最後だ
雪渓が現れると谷川岳西黒尾根も最後だ

 トマの耳に続きオキの耳も登って今一度大パノラマを堪能しました。さすが百名山だけあって多くの登山者で賑わっています。こういうところに来るとなんとなくすぐに立ち去りたくなってしまいます。
 標識の左に雪のついた山があるのがわかるでしょうか。「馬蹄形」の山々の向こうに見えるのが巻機山、越後三山の山並みです。随分わかる山が増えたものです。これもひとつひとつ登ったからなんでしょうね。

谷川岳オキの耳
谷川岳オキの耳

 そして西の方面に見えるのが、かつて積雪期に目に焼き付けた稜線「谷川連峰主脈」の山々です。オジカ沢ノ頭、万太郎山、仙ノ倉山、平標の山々がほぼ一直線に連なって見えます。まるで惑星直列のような美しさです。(なんのことやら…)

谷川連峰主脈の山々
谷川連峰主脈の山々 オジカ沢ノ頭、万太郎山、仙ノ倉山、平標山 右端に苗場山

 「平標」無造作な標識がかえって緊張を高めます。ここから後半戦スタートです。気を引き締めて行きましょう。

平標山への無造作な標識
平標山への無造作な標識
オジカ沢ノ頭にはくさり場もあった
オジカ沢ノ頭にはくさり場もあった

 一気に人がいなくなりました。笹原の中の小道をずんずん下って、少しづつ登り返してオジカ沢ノ頭へ。左手にとても綺麗な稜線を描いた目立つ山があります。両側切り立っていて頂上へ立ち上がる稜線は目を逸らそうにもすぐにまた見てしまう至極の稜線です。俎嵓(まないたぐら)というそうです。

俎嵓
俎嵓

 オジカ沢ノ頭のすぐ下に避難小屋があって、そこは俎嵓への分岐点となっていて注意書きが置かれていました。「この先、俎嵓で行き止まり。途中に滑落の危険箇所があるなど登山道として整備していないので通行注意」
 ここまでで数少ないすれ違った人に「どこからですか?」と聞くと「俎嵓ピストンです」と言っていたのを思い出す。あんまり記録を目にしたことないけれど、実は気づいていないだけかもしれない。

俎嵓への看板
俎嵓への看板 バリエーションの扱いなのかな?

 大障子ノ頭の手前にある避難小屋で今夜は宿泊です。稜線すぐ近くまで雪渓があるものの、水場は見つけられませんでした。雪渓を溶かして水を作るのが面倒なので、用心のために担いできた2リットルの水で賄うことにします。重たかったけれど持ってきてよかった。

大障子の避難小屋
大障子の避難小屋
夕暮れの谷川岳 左は茂倉山など
来たみちを振り返る 夕日で山が赤く染まる 左は茂倉山など

 日が暮れるのを眺めながら小屋の前でウイスキーをちびり、というか、のどが渇いているので続けざまに飲んで、すぐに飲み干してしまった。
 晩御飯は尾西のドライカレーにレトルトのカレー、アマノフーズのなめこの味噌汁。コーヒーを飲んだらあっという間に食事終了。あっけない…。

水も少ないので夕飯は簡単に
水も少ないので夕飯は簡単に

 大相撲のラジオを聴きながらまどろんで18時には就寝しました。夕方から風が吹き出し、小屋の外でブオーブオーと音を立てているけれど、こういう時やはり小屋は安心です。小屋の中でシュラフに包まり続けました。でもお腹が空いてグーグー鳴り続けました。

 風は夜半にやみました。小用で外へ出ると星の瞬きはわずかで、どうやら2日目は薄曇りのようですね。

越後湯沢の街が見える
越後湯沢の街が見える

 3時半に自然と起きます。元々水を使わなくて済むように朝ごはんはファミリーマートで買った「ザ・メロンパン」。あまりつぶれずに持ってこれたので、ふわふわ感が味わえた。それとインスタントながらドリップしたコーヒー。悪くない。東京の水道水だけど…。クノールのつぶつぶコーンクリームスープを飲んで出発だ。残る水分はポカリスエットの粉末を溶いた1リットル分と300㏄くらい。なんとかこれで平標山の家までしのがなければなりません。

 大障子ノ頭にはすぐに着いて次のターゲットは万太郎山。朝日が万太郎山に差してきましたが、薄曇りのせいかポヤーとした朱さです。空も前日と違って真っ青とはいきません。それでも十分なお天気ですけどね。

万太郎山
朝日を浴びて朱に染まる万太郎山

 登りきったところで分岐点がありました。土樽駅への吾策新道のようです。眼下に万太郎谷。沢登りのルートで有名です。谷川連峰の概念をようやくつかめてきた。いろんなルートもやっと理解できてきたような気がします。

 越路の避難小屋に着いて中を見ようと近づくと、ドアが開いて男性が顔を出しました。思いもしなかったのでびっくりしました。昨夜はここに泊ったそうです。あとで聞いたのですが、川古温泉から沢筋を越えて来たらしく雪渓の下を通過するような場面もあったそうです。越路は他にも主脈縦走の2人がいたので、結構混んでいたようです。大障子の小屋が一人使用だったのはラッキーというか贅沢だったですね。

 万太郎山から仙ノ倉山の稜線も素晴らしいのだけど、ギャップが大きいです。眺めただけでちょっと疲れた感じがします。越路の男性と入れ替わりながら前後して歩きました。2人とも黙々と歩きます。

仙ノ倉山が遠い ギャップが大きいな
仙ノ倉山が遠い ギャップが大きいな

 なんとかエビス大黒の頭に登ると、初めて逆方向に歩く方とすれ違う。女性一人だった。ほんと最近女性のソロの方が多い。颯爽としていてかっこいいです。

エビス大黒の頭
エビス大黒の頭

 そこからまた下がって避難小屋からまた上がる。さあみなさん、最後の登りですぞ。頑張りましょう。

仙ノ倉山への登りだ
仙ノ倉山への登りだ

 今度はアルトラのシューズを履いた4人組の男性とすれ違う。楽しそうに会話していて、足元が軽いからだろうか、4人とも軽やかさを感じる。アルトラの靴はちょっと憧れているのですよね。
 がんばって仙ノ倉山に登った。谷川連峰の最高峰だ。黙々と登っていた越路の男性も山頂に着いた瞬間笑顔となり、私もうれしくなりました。

仙ノ倉山の山頂
仙ノ倉山の山頂

 先に越路を出発していた主脈縦走の2人とここで出会う。
「この時期の主脈縦走は水場がない。水を担ぐのをみんな嫌って、馬蹄形に行く。でも主脈縦走のベストシーズンは今です。夏場は日影がないので暑さでやられてしまう」と話していました。水2リットルを担ぎ上げたのが賢明な判断だったと褒められたような気がして、ますますうれしくなった。

たおやかな平標山 背後に苗場山が見える
たおやかな平標山 背後に苗場山が見える

 人も多くいてここからはちょっとした下界です。平標山への稜線は素晴らしい。平標山の背後に苗場山が屏風のようにたっているのが格好いいのです。

平標山の山頂
平標山の山頂

 平標山はさらに人が増えました。時間も9時です。平標山の家はキーマカレーが有名で、ダメ元で寄ってみることにしました。水は残り500mlくらいあリますが、余裕をみて水を汲んでいきたいし。

平標山の家
平標山の家 水がジャバジャバ出ていてとても美味しい

 階段をずんずん下っていくと30分くらいで平標山の家に着きました。カレーの案内はなく休憩中っぽいのであきらめて、水だけ汲んで下山にかかりました。ここの水は冷たくて噂通りとてもおいしかったです。山の家からは見事なくらい階段が続きます。新緑の緑が下りるに従って濃くなっていくような気がしました。鳥のさえずりも騒がしい、とても気持ちの良い森です。

 林道に出ました。長い林道を歩くと11時過ぎに平標登山口に到着。ゆっくり後片付けをしながら11時45分のバスを待ちました。ここのバスは現金のみなのでご注意くださいね。

平標登山口バス停
平標登山口バス停

 終わってみればタイム的にもタクティクス的にも満足できる縦走となりました。これも主脈稜線の手強さゆえのことでしょう。アップダウンがあるし、仙ノ倉山なんかはスケールもそこそこ大きいので登りごたえがありました。
 高山植物はまだ少なかったけれど、6月のピークはさぞ咲き誇るのだろうなと想像し得るものでした。小屋も予約でいっぱいのようです。
 北関東で目標にしていた縦走をやりとげることができました。この調子で夏のシーズンに突入したいものです。

越後湯沢駅前の「レストランゆざわ」でチキンカツレツ
越後湯沢駅前の「レストランゆざわ」でチキンカツレツ

■谷川連峰主脈 2024/5/18-19
1.土合(9:00/13:15)オキの耳(13:30/15:35)大障子避難小屋
2.大障子避難小屋(4:10/8:05)仙ノ倉山(8:20/9:25)平標山の家(9:35/11:10)平標登山口バス停


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP