四国・三嶺〜剣山 しあわせな美しい縦走路


関西に住みながら四国の山にはほとんど行ったことがありませんでした。しかし日本百名山の剣山と石鎚山はいずれも標高が1,900mを超えるスケールを持っています。深田久弥は「双方とも古くから住民に尊崇され、歴史と伝統が山に沁みこんでいる。(中略)高山の少ない西日本で、二千米に近い標高は尊重するに足る。いずれの点からしても、この二つは名山である」としています。

10月の三連休に前夜発1泊2日で徳島の剣山へ行くことにしました。金曜夜にフェリーで徳島に渡り、1日目は名頃から三嶺に登り、白髪避難小屋でテン泊。2日目は剣山まで縦走し、見ノ越下山。公共交通機関を使った2024年10月の山行です。

次郎笈の均整のとれた稜線
次郎笈の均整のとれた稜線

■三嶺から次郎笈、剣山へ縦走 2024/10/12~13
1.名頃バス停(10:55/13:40)三嶺(13:50/15:15)白髪避難小屋
2.白髪避難小屋(5:30/9:50)次郎笈(10:00/10:40)剣山(10:40/12:05)見ノ越バス停

1.南海フェリーで紀伊水道をわたる

公共交通機関を利用して前夜発と言っても、夜行バスは大阪から徳島へ行く便はありません。そこで今回は海からのアプローチとしました。和歌山と徳島を結ぶ南海フェリーです。未明の午前2時40分発の便に乗ると徳島港に5時前に到着します。
家をゆっくり出て23時発の特急サザンに乗り込みました。なんか最近よく南海電車に乗るなぁ。この日は金曜の晩とあって、多くの人がほろ酔いでご機嫌さんです。リュックを持っている私は完全に浮いているので目立たないようにしていました。

南海なんば駅 23時0分の特急サザンに乗ります
南海なんば駅 23時0分の特急サザンに乗ります

和歌山港行きの電車はとっくに終電の時間をすぎています。スマホの地図アプリによると徒歩で40分の行程です。タクシーを利用しても良いのですが、とくに急いでもいませんので港へ向けて歩き出しました。開いている店は釣具屋さんとコンビニと、牛丼店がありました。牛丼店の手前の交差点を右折してフェリー乗り場まで。当然ながらふ他に歩いている人はいません。

和歌山市駅から和歌山港まで歩く
和歌山市駅から和歌山港まで歩く

午前0時50分にフェリー乗り場に着きました。窓口は出港30分前から開くというので待っているとみるみるうちに列ができました。「今日はバイクが多いなあ」と係員の声が聞こえてきます。さすが三連休です。徒歩乗車の私は自動販売機で切符を購入して(¥2,500)長い通路を進みます。ちなみにweb予約で割引制度あるようです。

南海フェリー和歌山港
南海フェリー和歌山港
和歌山港の通路には動く歩道があった
和歌山港の通路には動く歩道があった

乗船チケットの検札があって船に乗り込みます。今回乗る船は「かつらぎ」です。全長108m、総トン数2,620t、旅客定員427名とのこと。割とこじんまりした大きさだなと思いました。
椅子席やビジネスコーナー、ファミリー席、グリーン席もありますが、ほとんどの人がすぐに「じゅうたん席」で場所を確保しました。

南海フェリー内は椅子席と雑魚寝席がある
南海フェリー内は椅子席と雑魚寝席がある

乗船前は「ビールでも飲むか」と思っていましたが、誰も飲んでいません。考えてみればほとんどの人がドライバーで、2時間後には運転しなければならないのですから、当たり前ですね。私もさっさと横になりました。

フェリー内の自販機はカップ麺とビールもある
フェリー内の自販機はカップ麺とビールもある
南海フェリーの雑魚寝スペース
南海フェリーの雑魚寝スペース(混雑する前)

みなさんがゴソゴソし出すのを感じ、起きると午前4時半です。まもなく徳島に到着しました。降り口は入り口と逆方向にあるのでご注意を。私は知らずにしばらく乗船した入り口側で待っていて時間ロスしました。

南海フェリー「かつらぎ」徳島到着
南海フェリー「かつらぎ」徳島到着 車が続々とはき出されていく

午前5時というとまだ真っ暗です。徳島駅発の列車は1時間後ですので、歩いていくのにちょうどです。人気のない川沿いの道をてくてく歩いていくと、やがて徳島の街の灯りが近づいて行きました。背後のシルエットは徳島人のこころの山、眉山(びざん)です。

シルエットは眉山
シルエットは眉山

2.JR四国で阿波池田、バスで奥祖谷の名頃まで

JR四国はIC交通カードが使える駅が高松周辺だけとはじめて知りました。切符にスタンプしてもらうのが新鮮でした。

徳島線は2両編成 途中から学生で満員になる
JR四国は一部を除きICカード使えない

午前6時6分の徳島線、阿波池田行きの普通に乗り込みます。空いているうちに朝食としてコンビニ弁当を食べて正解でした。どんどん高校生が乗って最終的には立ち客が出るほど満員になりました。登山客の多くは貞光で降りました。土日祝に出る見ノ越行きのシャトルバスに乗るようです。私も帰りはそれに乗る予定です

阿波池田駅

阿波池田からはバスです。駅前で乗り込み市街地を走りますと、池田高校がありました。高校野球で活躍した池田高校で我々世代には蔦監督、やまびこ打線、阿波の金太郎こと水野雄仁など強烈な印象がありますよね。古いかな(笑)

四国交通バスは深い谷間を走る

バスは次第に峡谷深く谷底の道を進みます。とにかく集落が山高くにポツリポツリとあるのが驚きです。平家が落ちのびてきたとの説は本当だろうなと思いました。

高いところまで家がポツリポツリとある

バスはかずら橋夢舞台という、秘境に似つかわしくない立派なバスターミナルで久保行きとなり、久保で剣山行きの三好市のバスに乗ると、地元のキュートなおばあちゃんと会話しながら名頃へ行きました。なが〜いアプローチがようやく終わりました(笑)

かずら橋夢舞台
名頃に着いたら、かわいい案山子人形が出迎えてくれた 村の名物です

3.三嶺(みむね)から白髪避難小屋まで

まだ10人ほどを乗せたバスを見送りました。名頃で下車したのは私含めて3人。他の二人はいずれもソロの女性です。時間はもう10時45分なので急いで支度して出発しました。今日の行程は三嶺(みむね)まで登り、そこから稜線を白髪避難小屋まで行き、テント泊の予定です。

三嶺登山口の駐車場はいっぱい
三嶺登山口の駐車場はいっぱい この看板で「みむね」と読むことを知った
名頃の登山口

明るい森の中をそれも緩やかな登りが続きます。一旦林道に出たと思ったら、すぐに尾根上の道に入っていきます。

林道に出たらすぐに登山道に上がる
ダケモミの丘
12時20分 ダケモミの丘

終始登りやすい道で「こんな登りやすい山あったっけなあ」というぐらい。やがてぱっと空が開け大きな岩の間をくぐり抜けるやうにして笹の間を左上していくようになりました。最高じゃないですか。こんなにニョキニョキ岩があるとは予想していませんでした。一気に気分があがろうというものです!

たけのこのようです ニョキニョキ岩

上り詰めると池のそばに佇む三嶺ヒュッテがありました(13:25)。2023年に改築されたそうですね。きれいでした。

三嶺に出た途端笹原の地平線が良い
三嶺に出た途端笹原の地平線が良い
三嶺ヒュッテと剣山と次郎笈
三嶺ヒュッテと剣山と次郎笈

青い空と白い雲と笹の緑と、とてもきれいな光景です。13時40分、三嶺の頂上に立ちますと、天狗塚への稜線がとってもきれいで、そこにいた女性と「いい景色ですね~」と同じ感想に笑い合いました。

三嶺(1,894m)の頂上
三嶺から天狗塚へ続く稜線
三嶺から天狗塚へ続く稜線

この日はまだもう少し行かなければなりません。白髪の避難小屋でテン泊予定なのです。中央のピーク左のハゲたところが避難小屋のあるところです。

三嶺から見下ろすこれからの稜線 アップダウンが少ない!

三嶺の下りはわりと急で鎖場なんかもありました。三嶺の天狗岩です。

三嶺の天狗岩を振り返る

だんだんとススキが出てきました。カヤハゲの名前通りですね。そこまで来るともうすぐです。白髪山への分岐から避難小屋を見下ろしますと、広々とした原っぱにテントがポツポツと張られています。このテン場の難点はトイレがないことでしょうか。でも水場の水は良かったですよ。

白髪避難小屋が見えた
白髪避難小屋が見えた

夜寝てますと、シカの鳴き声がします。それもすぐ近く。テントから顔を出すと、暗闇の中でシカと顔を合わしたような気がしました。ほんの数秒でしたが、なんだか不思議な気持ちでした。

オリオン座 夜明け前の天頂付近で40秒ライブコンポジット

4.白髪避難小屋から幸せな稜線歩きで次郎笈、剣山へ 

翌朝は5時半に出発。まだ真っ暗でヘッドランプで行動。もうとっくに出発している人もいるけど、まだまだゆっくりする人も。私は貞光行き13時45分のバスに乗りたいので、あまり油断せずに行くことにした。

白髪避難小屋から樹林帯を登る
白髪避難小屋から樹林帯を登る

日が昇り、平和丸というなだらかなピーク。ススキの稜線が朝日に照らされてとても幻想的でした。ここで出会った青年と「もう最高ですね!」と話し合う。個人的にはここでの朝日の光の加減と山の輝きが一番印象深いです。

平和丸 ススキが朝日を浴びて輝いている
平和丸 夜明けを迎え「あ〜きれいだな〜」と思っていたら
平和丸 ススキが足を浴びて輝く
平和丸 ススキが朝日を浴びて輝きだした 幻想的な光景です
朝日でシルエットの剣山と次郎笈
朝日でシルエットの剣山と次郎笈
朝日を浴びる三嶺
朝日を浴びる三嶺

高ノ瀬、丸石避難小屋、丸石とどんどん進めます。ほんと、この稜線って歩きやすい。それも剣山、次郎笈をずっと目指して歩けるなんて、なんて幸福度の高い稜線なんだろう!

朝日を浴びる稜線 続々と人がやってきた
朝日を浴びる稜線 続々と人がやってきた
朝日を浴びる稜線 振り返る
朝日を浴びる稜線 振り返る
高ノ瀬はオオヤマレンゲが有名なようです
高ノ瀬はオオヤマレンゲが有名なようです
とはいえままだ先だ
とはいえままだ先だ
丸石の避難小屋
丸石の避難小屋 昨日ここでテント泊したという人もいた

丸石手前のピークで次郎笈とまともに対峙します。次郎笈(じろうぎゅう)というと、よく剣山を登ったついでに登られているような印象がありますが、三嶺から稜線を辿って来ると、存在感は圧倒的に次郎笈です。高さもあんまり変わりませんし、山としての風格も堂々としていて素晴らしいと思います。

丸石からの次郎笈
丸石からの次郎笈 左に頭をのぞかしているのが剣山

丸石から少し降りてそこからは上りです。と言ってもなだらかな稜線には変わりません。トラバース道との分岐が終わってからは流石にややきつい上りとなりましたが、それも長くは続きません。

次郎笈の南面 紅葉が綺麗だろう
次郎笈の南面 紅葉が綺麗だろう
次郎笈の最後の登り
次郎笈の最後の登り

次郎笈の最後の登りを終えると、右手に人だかりのしているピークがありました。あっちだったのか。

次郎笈頂上はあっち
次郎笈頂上はあっち

次郎笈の頂上は展望が超いいです!剣山はもちろん三嶺からの稜線も石立山も360度の展望です。四国って山が深いなあ。どこまでも続いているんだなあ。

次郎笈からの剣山
次郎笈からの剣山
三嶺から来た稜線
三嶺から来た稜線
次郎笈からの眺め 四国の山が連なる
次郎笈からの眺め 四国の山が連なる
次郎笈の頂上
次郎笈の頂上

さて次郎笈で展望を楽しんだら、次はいよいよ剣山です。しかし登山者の数がグンと多くなって、渋滞があちらこちらで起きています。まあでも皆さん笑顔が絶えませんね。この天気に、この稜線ですから。

次郎笈から下りる。人がいっぱいだ
次郎笈から下りる。人がいっぱいだ

次郎笈のよく見る写真の撮影ポイントでは、皆さんポーズをとっていました。確かに映えるですね。

次郎笈の均整のとれた稜線
次郎笈の均整のとれた稜線

人をかいくぐるようにして登った剣山の頂上はもっとすごかった。木道があるのは理解できるのですが、各方面にテラスが設けられていて、多くの人が和んでいます。この整備ぶりはすごいな。

剣山の頂上
剣山の頂上
剣山頂上は木道が完璧に整備
剣山頂上は木道が完璧に整備

綺麗なトイレで用をすませ(チップ100円入れました)、剣山の神社の脇から登山道に入り、リフト乗り場を回り込むようにしてテント場を通り過ぎ、ぐんぐんと降りて行きます。

剣山の神社
剣山の神社
剣山の下山路
剣山の下山路

1時間ほどすると見ノ越の剣神社の境内に降りることができました。茶店でそばを食べてから、まだ時間が余っているのでラ・フォーレつるぎ山まで歩きましたが、日帰り温泉は14時からとのことで、風呂は入れずでした。いつもの事前調べの甘さです(泣)。
13:45見ノ越発(ラフォールは13:52)の貞光行きのバスに乗ることができました。

剣神社の参道を降りる
剣神社の参道を降りる

想像以上にいい稜線でした。きつい登りがあまりなく、樹林帯が少なくて展望がよく、剣山と次郎笈をずっと見ながら行けるという、なんて幸福度の高い稜線なのでしょう。太陽の光が逆光なのは仕方ありませんが。
四国にはツキノワグマが絶滅危惧種として剣山周辺(石立山)にだけ生息するそうです。クマが生息する世界で一番小さい島だと、地元の人らしい登山者から聞きました。平家落人の説も頷ける山の深さは、ちょっと思い当たらないエリアですね。四国のポテンシャルの高さを思い知りました。四国の山をもっと知りたくなる山行となりました。


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