
火打山の紹介とアプローチ
火打山は頸城(くびき)山塊の最高峰で標高は2,462m。日本百名山の一つとして知られています。頸城三山の他の妙高山や焼山が個性的で存在感豊かな山容なのに対し、稜線を左右に大きく広げ優美な姿をみせます。山頂直下には高層湿原があって、高山植物が咲き乱れる見事な景観をなしています。そして火打山は花の百名山でもあるのです。深田久弥翁は火打山について次のように絶賛しています。
何と広々とした山腹であろう。その上に火打の頂がスッキリと潔く立っている。その山腹に豊かな平地を持った高谷池がある。池の附近の景色は全くすばらしい。夏ならば高山植物の褥(しとね)である。(筆者注:褥…敷物の意味)
火打山をどうやって登るかですが、無積雪期はほとんどの人が笹ヶ峰からピストンを選んでいます。上り4時間45分、下り3時間45分の合計8時間半のコースです。
マイカーの方は登山口に駐車場がありますし、公共交通でも行く事ができます。えちごトキめき鉄道の妙高高原駅から笹ヶ峰まで頸南バスが直行バスを7月から10月に運行しているのです。
高谷池ヒュッテで1泊するのも良いですが、テント場を含めてハイシーズンは予約がとりにくいです。そこで思いついたのが登山口の笹ヶ峰キャンプ場で前泊して、翌日日帰りで登る計画です。笹ヶ峰キャンプ場のフリーサイトは広々としていて、皆さんに是非とも泊まっていただきたいオススメのキャンプ場です。
■火打山 2025/07/27
笹ヶ峰登山口(4:40/7:20)高谷池ヒュッテ(7:30/8:50)火打山(9:00/12:20)笹ヶ峰登山口
妙高高原から直行バスで笹ヶ峰へ

妙高高原駅に行くのには、大阪からですと9時過ぎのサンダーバードに乗り、敦賀で北陸新幹線に、上越妙高からえちごトキめき鉄道に乗り換えて13時51分に到着します。(私は交通費節約のため、敦賀まで新快速等で行きましたので、大阪駅を8時に出発しました)。ちなみに高谷池ヒュッテに宿泊ができる場合は、夜行バスも良いと思います。
駅にはお土産屋が1軒とモンベルの商品も揃えた観光案内所があるくらいです。笹ヶ峰への最終便14時20分の直行バスに乗り込みます。1000円。平日は上下1便ずつなので要確認ですね。
乗客はやはり笹ヶ峰キャンプ場で前泊する女性一人でした。同じようなことを考える人はいるもんだなあ。というか、公共交通を使うと、自然とそうなるのかもしれませんね。

笹ヶ峰キャンプ場はとても快適

15時10分に終点の笹ヶ峰に到着。バスを降りて早速キャンプセンターへ行って手続きをします。フリーサイトは1泊1張1,500円、管理費600円の合計2,100円です。シャワーは13時〜19時半、トイレはきれいだし、分別してゴミも捨てられます。コインロッカーもありますので、翌日の登山時に不要なものを入れておく事ができます。

「フリーサイト内はどこ張ってもいいですよ」とのことですが、とにかく広大なので、他のテントのことを気にする必要がありません。駅前で買ったビールと持参のウイスキーでゆっくり、まったり。途中夕立がありましたが、炊事場に避難してやり過ごします。
あまり風雨が強くないような場合、軽量化のためモンベルのU.L.ドームシェルター(旧型)を使う事が多いのですが、この程度の雨なら浸水することもなく重宝しています。

夜中に起きると満点の星空。多すぎて星座の特定までできませんでしたが、オリンパスのTG-4のライブコンポジット機能を使って撮影しました。10分の露出(とは言わないと思いますが)で下の写真となりました。

笹ヶ峰登山口から 十二曲がり〜富士見平までは急登です

翌日は3時半に起きてパンを食べて、お茶を飲んで、トイレも済ませ、コインロッカーに不要な荷物を入れて出発です。登山口はキャンプ場から3分ほどです。登山口に周辺で熊の目撃情報があったとのことで、慌てて熊鈴をつけました。午前4時40分出発です。

気持ちの良い森に敷かれた木道が続きます。さすが百名山。整備がされています。午前5時20分に黒沢橋に到着。
男女のパーティーがラジオを鳴らし続けています。離れようとしてもなぜか離れない、ちょっと煩わしい存在でした。もちろん勝手に私が思っているだけで、なんの意識もされていないのはわかっているのですが、このパーティーとは最後まで前後してやや精神的に消耗しました。

黒沢橋を過ぎるといよいよ「十二曲がり」。ジグザグの道が続く急登ですが、実はここはあまり大変だとは思いませんでした。

紫のツボミかと思ったら、これは果実なのですね。サンカヨウです。花は今回一つも見られず、全て果実でした。

そうこうしているうちに十二曲がりが終わりました。正直拍子抜けするくらいでした。木立の合間から後立山連峰が見えました。白馬三山かと思います。

その後現れたのが富士見平までの急登です。十二曲がりよりここの方が、大岩があったり根っこがあったり、足をあげるところがあったりで消耗しました。

ひょいと上がったところに携帯トイレのためのブースが設置されていました。

富士見平に着きました。ここは黒沢池ヒュッテとの分岐でもあり、多くの人が休んでいます。

高谷池ヒュッテまで高山植物が咲き競う
樹林は低木となって、いよいよ高山植物が咲き乱れ始めました。




今回見たかったのが、下の写真のキヌガサソウ。多分白馬で見て以来、30年ぶりぐらいになるのではないかな。広がった葉っぱの真ん中に大きな花を咲かせていました。


やがて高谷池ヒュッテに着きました。三角屋根が印象的な小屋ですね。テーブルやベンチがあって、日帰り登山用のリュック置き場も備えられていました。昼近くの時間帯になると「カフェ」もオープンするそうです。

ロックガーデン〜天狗の庭 ハクサンコザクラにワタスゲの群生が
それまではガスっていて、正直なところ展望は諦めていたのですが、高谷池ヒュッテから火打に向かって登りだすと青空の中に大きな山容が見えてきました。ロックガーデンと呼ばれているところに来た頃には谷あいの向こうに見えた時には「これ見られただけでも来た甲斐があった」と思ったものでしたが、そんなどころではない事がすぐにわかります。

火打山はハクサンコザクラが有名だそうです。確かに群生していたところもありました。下の写真はロックガーデンで撮影したものです。



ロックガーデンを抜けて「天狗の庭」に来た時に、パーッとガスが晴れました。「天国」「シャングリラ」どんな言葉を使っても陳腐に思えてしまうような景色です。
池塘に火打山が写ります。そして白い花はワタスゲです。先ほどのハクサンコザクラとワタスゲが火打山を代表する高山植物だそうです。

ワタスゲがこんなに咲いているのを、私は初めて見ました。ちょうど見頃だったのでしょうね。こんなチャンスを逃してはなるものかと、もう、夢中でカメラ撮影をしてしまいました。

白い綿が無数に空中に浮かんでいるかのように見えて美しい。この時みたワタスゲには露がついていて、ぺしゃっとしていますが、その柔らかさを想像すると、それだけで優しい気持ちになれます。

火打山頂上はガスってたけど大満足

天狗の庭の想像以上の景観に、すっかり時間をとってしまいました。イメージ的には高谷池ヒュッテから山頂はすぐなのですが、実際は違って距離はあるし、登りも急登で私も含めみなさんフーフー言って登っています。

高妻山と乙妻山が見えました。あそこに登ったのはもう30年くらい前になるなあ。残雪期でした。


ライチョウ平に着きました。火打山にはライチョウが生息しているそうですが、この日は会えず。ここだけ雪渓が残っていました。

火打山の山頂には8時50分に到着しました。残念ながら展望には恵まれませんでしたが、それでも十分満たされた気分です。行動食を口にしました。

さてカメラ撮影に時間をかけてしまっているので急いで下山することにして、山頂を9時に出ました。高谷池ヒュッテで昨日のバスで一緒だった女性と会いました。女性は今晩は高谷池ヒュッテでテント泊だそうです。羨ましいなあ。日暮れや夜明けのころもいいだろうなあ。お互いに「お気をつけて」と声をかけて別れます。
結局、笹ヶ峰の登山口には12時20分に到着しました。13時15分のバスに間に合います。シャワーはできませんでしたが、コインロッカーの荷物を回収して、夜露で濡れたテントを乾かす事ができました。ドクター・ペッパーのペットボトルを購入。バスには結構乗客がいて、ロングトレイル「あまとみトレイル」をして来た男性と話しながらの道中でした。ロングトレイルも惹かれるものがあります。
妙高高原で日本酒・君の井購入

妙高高原駅前の土産物屋さんで日本酒・君の井を買いました。山廃の純米吟醸です。このお店では切手も購入して絵葉書を一通送る事ができました。
火打山にはもともと山スキーで行きたいとずっと思い続けていました。山には一番登るのにいいシーズンと登るスタイルがあると思っていたのですが、最近考えが変わりました。山はいつ行ってもそれぞれの表情を見せてくれるし、行ける時に行かないと結局行けなくなると。これも年齢を重ねた結果でしょうかね(笑)
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