
南山城は、なだらかな山間を木津川がゆったりと流れ、開放感を感じさせる景色の良いところです。南山城が歴史の舞台に出てくるのは、聖武天皇がこの地に恭仁京(くにきょう)を造営したことからです。その後も各時代を通じて、南山城は仏教の聖地として山岳修験の拠点となっていたそうです。
木津川とJR奈良線に挟まれた南山城には、これといった目立つ山がないので見落とされがちですが、歴史のあるお寺も多くハイキングコースには事欠きません。
今回は、JR棚倉駅から出発して三上(さんじょう)山に登り、一旦鳴子川に下りてから尾根を越えて海住山寺(かいじゅうせんじ)に至り、最後はJR加茂駅にでるコースをご紹介します。
三上山の展望所はゆるやかに流れる木津川や、生駒山や二上山、葛城山まで望むことができる素晴らしいところです。また海住山寺や恭仁京跡など歴史を感じさせる見所があり、古の都に想いを馳せることができます。
コースタイムは実歩行時間で、JR棚倉駅から三上山まで約2時間、三上山から(山城町森林公園に寄らずに)海住山寺まで1時間、海住山寺から恭仁京に寄ってJR加茂駅まで約1時間といった感じです。
■三上山〜海住山寺 2025/10/7 実歩行タイム
JR棚倉駅(8:25/10:20)三上山(10:45/11:25)山城町森林公園(11:30/12:05)海住山寺(12:25/13:35)JR加茂駅
JR棚倉駅から「かいがけの道」で三上山へ

奈良駅から列車に乗ってJR棚倉駅で下車します。今昔物語でいわれのある蟹満寺(かにまんじ)の石碑がありました。蟹満寺は今昔物語の「蟹の恩返し」の縁起で知られ、金銅による釈迦如来坐像は国宝です。
今回は蟹満寺に寄らず、駅からすぐに見える湧出宮の参道を歩きます。湧出宮は雨をもたらす神として崇拝されていて、お宮の行事は国の重要無形民俗文化財に指定されています。中でも2月の第3土曜日と日曜日の「居籠(いごもり)祭り」は、かつては村人が家の中に籠って音を立てないもので、奇祭とされていました。一度機会があえば、見てみたいと思います。

しばらくは竹林の中を進んだりします。「劇薬危険!!孟宗竹育成のため、防虫農薬散布中」のプレートがあったりして驚かされます。

一度道路に出て、また竹林の中に入って行きます。下の写真で右の道です。

一度は広々としたところに出ますが、また雑然とした森の中の道を進みます。

やがて再び道路に出て、すぐに「かいがけの道」の道標が現れました。実は道標を見るのはこの日初めてのことです。どうやら「山城町森林公園を出発地点」として道が整備されているのでしょう。ここまでの道が割と雑然とした道でしたので、駅から山城町森林公園まで歩いて、そこからハイキングをスタートさせても良いかと思いました。

途中、右手の木の間からピークが見えました。多分あれが三上山でしょう。

「かいがけの道」は広くてよく踏まれていて快適な道です。下の写真の地点では、道は二手に分かれています。どちらも三上山方面なのですが、右手はなだらかだそうです。私はせっかちなので左手の道を選びました。

下の写真の「三上山へ」の道標がくるりと回転して、左手を指し示していたので、ちょっと迷いました。こういう時GPSアプリって本当に助かります。すぐに違う方向に進んでいるとわかり、写真右への道に修正することができました。

道路から左手の山の中に入るところにあった看板。そのうちリスが見えなくなるまで木が看板を喰うのでしょうか…

三上山の展望台は絶景 木津川を見下ろし、生駒や葛城山を望む

やがて三上山の展望台に着きました。ここの展望台は360度見渡せて本当に価値がありますね。木津川のゆるやかな流れは西から北へ方向を変え、かなたには葛城山、二上山、生駒山が遠くに見えます。


下の写真は加茂の方面。駅前のタワーマンションが見える。大和路快速の始発駅で、天王寺まで50〜59分。駅近。口コミの評判は良さそうです。

「冒険の道」から山城町森林公園に寄り道

展望台でゆっくり過ごし、次は海住山寺を目指します。山頂から「冒険の道」を選んで下ってみました。道標はあるのですが、あんまり人が通っていないのか、やや荒れ気味であります。
三上山には「かいがけの道」「冒険の道」の他に「長寿の道」「山頂の道」があります。1992年ナカニシヤ発行の「京都滋賀南部の山」(内田嘉弘著)によると、「長寿の道」「山頂の道」ともに、出だしに急登がある、との記述があるので、「かいがけの道」が一番無理なく登れて良いのではないでしょうか。

せっかくの機会なので、山城町森林公園に寄り道してみました。環境整備協力金大人300円、施設使用料としてテントサイトは休前日1日1000円、ログハウスは休前日1泊16,000円などなど細かく料金が決められています。
事務棟にいた男性と話をすると「1ヶ月半ほど前、頂上の先でクマが出た」とのことでした。全く警戒していませんでした…

海住山寺への分岐点まで戻り、森の中に入って行きます。

海住山寺への道標がこぎみよくつけられていて、尾根の上に立つとあっけない感じで海住山寺につくことができました。

海住山寺で国宝の五重塔や重要文化財を拝観

海住山寺(かいじゅうせんじ)のHPによると、お寺は恭仁京が作られる6年前に創建されたとのこと。一度は火災で消失しましたが、貞慶が草庵を営み、補陀洛山海住山寺と名付けたのが始まりのようです。
お寺には国宝の五重塔をはじめ、重要文化財の十一面観音菩薩立像などを拝観することができます。本堂内拝観は500円。拝観しない登山者も入山料200円です。
ちなみに海住山寺では10月25日から五重塔が開扉され、文化財が公開されるそうですので、よかったら訪れてみてください。詳しくはお寺のHP参照。

恭仁京跡を訪ね、その後JR加茂駅へ

海住山寺を後にして急坂を下り、せっかくなので恭仁京後に寄り道しました。恭仁京はそれまでの京都に比べ規模も小さく、短命な都でしたが、この間に国分寺・国分尼寺の建立を命じたり、墾田永年私財法などが決まったりと、教科書に載っているような割と大事な行政がなされていたようです。

あとは加茂までのんびりと歩きました。
ブログを書くに当たって、改めてこの地域のことを調べたのですが、調べれば調べるほどいろんなことが掘り起こされ、どんどん深みにハマって行くような気分となりました。まだまだほんの入り口の知識しかないのですが、とても面白いです。また仏像等も比較的残されていて、登山を外れても、じっくりと拝観したいものです。
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