NHK「K2 未踏のライン 平出和也と中島健郎の軌跡」を見ました


誰のためにでもなく、自分自身との対話の中で選んだ道—ルートを残すという行為。消費社会では決して顧みられないものでしょうが、そうであるがゆえに大きな価値があるのだと思う。しかしその結果として2人が遭難しました。
深い悲しみが番組全体を覆っていますが、登山という行為とは何かを感じ、考えさせる良い番組でした。シガー・ロスの曲「Fljotavik」も効果的でよかったです。

平出和也と中島健郎ペアはピオレドール賞を3回受賞

平出和也、中島健郎のペアは言うまでもなく、世界に誇るクライミング・ペアです。クライミング界の最高の栄誉とされるピオレドール賞を計3回受賞しています。2018年のシスパーレ北東壁、2020年のラカポシ南壁、2024年のティリチミール北壁。その2人が2024年6月に選んだのがK2西壁でした。

K2西壁の「鎌のルート」とは

K2西壁は1997年日本山岳会東海支部が頂上直下から西壁に移り登っているほか、2007年にロシア隊が岩壁帯を登っていますが、いずれも極地法と呼ばれる、大量の物量を使って登るものでした。

少人数で短期間で登るアルパインクライミングというスタイルでは、ヴォイテク・クルティカが4度も挑戦していますが、6,800mを最高点に断念していました。クルティカがルートに選んでいたのが、平出、中島が今回挑む「鎌のルート」です。誰もそのルートを登ったことがなく、またその目で見たことがないヒマラヤに残された空白地帯とも言えます。

悪天候に阻まれながらも、あきらめなかった2人だが…

セラックを苦労して超えて6,500m付近にC1建設、大岩を回り込んで雪田に到達。それから悪天候に見舞われBCでの停滞を余儀なくされ、しばらくルートを伸ばすことができませんでした。それでもあきらめなかった2人は7,500mにC2を設営しました。そして最小限の装備を持って偵察しに行ったところ、目視していたスタッフによると「7,550m付近で氷とともに約1,000m滑落した」そうです。

番組を見た感想

気になったのが、平出さんが「ウォッホー、K2!」と叫んだりするのが、無理矢理に自らを奮い立たせようとしているように感じたところです。また中島さんに全然いつもの元気がなかったことも気になりました。中島さんはK2を目の前にしたとき「想像以上に大きいな、こりゃ」とスケールの大きさに圧倒されていましたし(平然とできるほうが無理かもしれないけど)、「登っても登っても全然着かない」と吐露しています。また出発前にも感情の揺れがあることをインタビューで明らかにしていました。

以前、登山家にとっての「43歳の壁」を作家で極地旅行家の角幡唯介さんがテレビで話していたのですが、どこかこのチャンスを逃すともう挑戦できないというような思いにつかれていたのではないかと思ってしまいました。そんなちゃちい考えではないと信じたいのですけど。

少なくとも自分の信じた道を最後まで全うした、それだけは確かだと信じたい。カメラマンとしても活躍していただけに、もっともっと2人のクライミングを見たかった。あらためてお二人の冥福をお祈りしたいと思います。

NHKスペシャル スタッフ一覧

撮影:石井邦彦 中島健郎 平出和也、編集:林宏、音声:谷弘明、映像技術:岩谷咲、コーディネーター:和田薫、CG:池尾沙織、音響効果:早船麻季、ディレクター:和田萌、プロデューサー:川畑耕平、制作統括:真藤忠春、国沢五月、中島木祖也

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