
瑞牆(みずがき)山(2,230m)と金峰(きんぷ)山(2,599m)は奥秩父を代表する2つの峰で、いずれも日本百名山です。瑞牆山について深田久弥氏は次のように記しています。
この山は岩峰の集合体とでも言うべきか。岩峰群を持った山は他にもあるが、瑞牆山のユニークな点は、その岩峰が樹林帯と混合しているところである。まるで針葉樹の大森林から、ニョキニョキと岩が生えているような趣である。(日本百名山より)
瑞牆山は昔から憧れの山でした。戸田直樹さんの「春うらら」が「岩と雪」に掲載され、衝撃を与えたはずなのに、その後再登はそれほど聞かない。謎ゆえに興味がそそられました。その後も、ベルジュエールなどマルチピッチルートの評判で再び瑞牆の名前を聞くようになりました。
今回はクライミングではなく、一般ルートから1泊2日の行程で瑞牆山と金峰山の両方を登る計画です。JR韮崎駅からバスに乗って登山口の瑞牆山荘まで行き、富士見平でテントを設営した後に、瑞牆山をアタック。2日目に金峰山をピストンし、テントを撤収して瑞牆山荘まで戻るものです。奥秩父は関西人の私にとって縁遠い山域でしたが、まさに「岩峰が樹林帯と混合」していて、深くて緑の美しい森林は素晴らしいものでした。
東京に住んでいた頃の2021年8月の山行です。
■瑞牆山と金峰山 2021/8/28-29
1.瑞牆山荘(10:15/11:00)富士見平(11:30/12:50)瑞牆山(13:20/14:30)富士見平
2.富士見平(4:30/7:20)金峰山(7:40/9:55)富士見平(10:15/10:40)瑞牆山荘
1日目:みずがき山荘から富士見平へ 気持ちの良い森だ

2021年というと東京五輪の年です。このころはまだ新型コロナウイルスの影響でマスクをしていたころです(写真でもマスク姿の方が見えます)。韮崎駅からのバスは満員で、密な状態に「やばい」と思ったことを覚えています。今となっては苦笑ものですが、当時は真剣そのものでした(笑)

みずがき山荘から30分ほど登ると尾根筋に出て瑞牆山が眼前に広がる。まさに異次元に迷い込んだかのような山容です。


「よーし、待ってろ。次は必ず登ってみせる!」とファイトを燃やした、というのは嘘で、この岩場を登ることをマジで考えていたなんて、今じゃ考えられなーい。
1時間くらいで富士見平に到着。木々の中のテント場でとても気持ちが良い。この日はいい天気でしたが、さすがに涼しい。キャンプだけを楽しみに来た人もいるようで、夕食時は美味しそうな匂いが漂っていました。

富士見平でテントを設営すると、すぐに瑞牆山にアタックです。
瑞牆山に富士見平からアタック
一度沢に降りて、桃太郎岩を見ます。

大ヤスリ岩を見上げながら鞍部に着くとまもなくで山頂でした。大ヤスリ岩は目立つ岩ですね。ギャラリーが多くて登りがいがあるでしょうね。

山頂はさすがに大勢の人がいます。下の写真で奥に見えるのは八ヶ岳連峰です。一番高くて三角なのが赤岳ですね。

ちょっとした感動だったのが、秩父の山の森の広がりです。アニメ「もののけ姫」に出てきそうな森林が眼下に広がります。かつての日本の山野はこんな感じだったのではないでしょうか。秩父はあまり人の手が入っていないのでしょうか。
下の写真で奥秩父の森の向こうにそびえているのが、茅ヶ岳と金ヶ岳です。格好いいですね。奥に見えるのは北岳など南アルプスの山々です。

一般に奥秩父の山々はこれという特徴がなく、しかも複雑に重なり合っているので、遠くから眺めて、一々の山を指摘するのがむずかしい。そんな時私はまず第一に金峰山に眼をつける。(日本百名山より)
深田久弥がこういうのもわかります。ぴょこんと立っているのが、金峰山の五丈岩です。

この後、富士見平に戻り、晩御飯タイム。レトルトカレーで簡単にすませました。
2日目:湧き上がるガスの中、金峰山へピストン
翌日は4時半に出発してヘッドランプ行動です。大日岩で明るくなってきましたが、だんだん稜線にガスがかかって頂上を望むことができません。





7時20分に山頂に到着です。瑞牆山からもくっきり見えた五丈岩です。下の写真で登っている人がいますが、信仰の対象であり登攀厳禁です。実は気づかなかったのですが、「禁止」の立て看板を2021年7月に設置していたそうです。過去には事故も起きているということです。この時はそんなことも知らずにうらやましく眺めていました。
御岳山 金櫻(かなざくら)神社のHPに「五丈岩は神霊の宿る岩として厚く信仰されてきた神聖なところです。岩に登ることは厳禁です」と看板の設置が報告されています。

ガスも晴れないので下山しかけるとガスが晴れてきました。よくあることです…。

富士見平ではマルバダケブキが咲き、アサギマダラが人懐っこくまとわりついてきます。アサギマダラは海をわたることで有名です。この日は外国への旅の途中ですね。

富士見平の小屋でバスの時間を確認して大急ぎでテントを撤収して30分。バスは11時25分発です。韮崎駅からも、なかなか乗り継ぎが悪くて暇を持て余しましたが、それも贅沢な時間ですね、きっと。
瑞牆山の隣には小川山があります。大学時代に屋根岩で岩登りしたのを思い出しました。いろんな大学が個人個人で集まり、パートナーを次々と変えて次から次に登りました。楽しくて仕方なかった。
今はあまり高位グレードは望まないけれど、岩にロープを伸ばしたいものです。それは自分次第。わかっているんですけどね。
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