
将棊頭(しょうぎかしら)山の紹介とコースタイム
中央アルプスは木曽駒ケ岳(2,956m)や空木岳(2,864m)の日本百名山が人気で(この傾向はどこでも同じですね)、いずれも駒ヶ根高原が登山口として賑わっています。木曽駒ケ岳にはロープウェイを使って登るのがポピュラーですが、かつては桂木場から将棊頭(しょうぎかしら)山を経て木曽駒ケ岳へ登るのがメインルートだったようです。ちなみに桂木場から木曽駒ケ岳は上り6時間40分、下り4時間15分です(登山口の案内図より)
その将棊頭山(2,730m)ですが、1913年の教員や生徒が遭難し11人が死亡した木曽駒ケ岳大量遭難の舞台となりました。この事故は新田次郎の小説「聖職の碑(いしぶみ)」で有名です。当時と今では装備も設備も違いますが、山の厳しさを思い起こす機会とするにも良いでしょう。
今回はマイカーを利用して桂木場登山口から将棊頭山を日帰りでピストンするコースをご紹介します。往復7時間のコースタイムです(案内図より)。樹林帯を抜けて稜線に出たときの大展望が感動ですし、高山植物が咲き、ライチョウにも会えましたので大満足でした。
■中央アルプス・将棊頭山 2025/7/13
桂木場登山口(7:05/9:05)大樽小屋(9:10/11:00)西駒山荘(11:00/11:15)将棊頭山(11:20/14:05)桂木場
桂小場駐車場は日曜日午前7時で満車

中央道を小黒川PAのスマートICから下りるとすぐに桂小場の駐車場に着きました。スマートICのおかげでだいぶ時間が短縮しました。小牧JCTから2時間弱くらいでした。
駐車場は午前7時には満車で手前300mくらいの路肩スペースに停めました。出発準備をしていた男女ペアに聞きますと「この時期は上(正規の駐車場)は満車になるんですよ」ということです。

登山口には案内図があります。
このルートは桂木場ルートといい、昭和42年に千畳敷ロープウェイが架設されるまで西駒登山のメインルートでした。現在でも中央アルプス登山の主要ルートとして人気が高く…
歩いてみてわかりました。大変歩きやすい道です。特に前半はフカフカの土の道が続きます。早くも下りが楽そうだなと考えたりしました。
登山口の看板で気付いたのですが、最近はどこでも見かける「熊出没!」の注意喚起の看板がありませんでした。マジで怖いと思っているので、これは安心です。
桂木場ルートはかつてのメインルートだけに歩きやすい

20分ほど登ると水場が現れました。先ほどの案内図にも紹介されていた「ぶどうの泉」です。山ぶどうの蔦の絡まる森の山肌から湧き出てくるところからこの名前がつけられましたそうです。小黒川源流の一つとされ「中央アルプス山系屈指の名水」とされています。帰りに飲みましたが、確かにうまかった〜

しばらくは植林地内をジグザグ登って行きますが、左上して尾根に上がるとパッと林相が明るく変わります。

次に出てきたのが野田場と呼ばれるところ。ここにも水場がありました。今回1リットルのポカリスエットを持っているのですが、この調子だと水には困らないですね。安心です。

この辺からはトラバースするように進みます。
ちらほら下山してくる人に会います。「午前3時過ぎに駐車場に着いて登りだしました」とのこと。服装から見てトレランの人です。4時間半で往復してくるのですからすごいもんだなあと思います。こちらは自分のペースでゆっくりと行きましょう。とは言っても道がなだらかなので、スイスイ行けてしまうのです。

横山道分岐を経て馬返しと呼ばれるところに到着。

やがて「落雷事故現場」の白い板が貼り付けてある木に出会いました。1975年年7月に伊那中学校の学校登山で、「この木」に落雷があり、そばにいた生徒が意識不明となった。濁流となったところに電気が走って多くの生徒が火傷を負ったが、幸い全員回復して下山できたということです。
こんな森林帯で「この木」に雷が落ちるなんて。高い木のそばは危ないと言われていますが、森林帯でも起こりうるのですね。こわいな〜。「大気が不安定」なんて毎日のように言ってますものね。

大樽小屋は便袋のトイレあり「協力金500円以上お願いします」
白川分岐を経て大樽小屋に到着。

大樽小屋の外には個室スペースがあってトイレができるのですが、便袋を利用する方式でした。便袋方式は初めて見るのですが、携帯トイレ、処分費、人件費を合わせると1,170円以上かかっていて、これらは伊那市の税金で賄われているとのこと。協力金500円以上求められています。
先ほど熊出没の看板がないと書きましたが、いま気づきましたが「クマを呼び寄せてしまうので小屋に食べ物等を置いていかないで」との注意書きがありました。調べると空木岳などで目撃情報があるそうです。熊鈴はもう必携のアイテムになったようです。

胸突八丁に到着。信大ルートの分岐でもありますが、信大ルートは「迷いやすく橋も流出。通行は控えてください」との注意書きがありました。

胸突八丁の地名に「さあ、ここから急登か」と思ったのですが、最近感覚がおかしくなっているのか、さほどの急登に思えません。やがて津島神社というところに出ました。大きな岩がご神体なのでしょうか。

稜線が近づくと高山植物が咲く道となった
ここから急に出てきたのが、高山植物たちです。ゴゼンタチバナ、ウサギギク、ハクサンフウロ。写真撮影に忙しくなります。



だいぶ両脇の木々が低くなってきたなあと思っていると、ひょいっと稜線に出ました。「わー」と思わず声を出してしましました。久しぶりのアルプスの稜線です。
空が青い!というか濃い!
夏山の稜線を歩く 空の青さが濃い

北側には茶臼岳への稜線です。この時は帰りに余裕があれば寄ろうと思っていのですが…

「稜線通しは冬道」との表示を見て、まずは定石通りに西駒山荘を目指しました。ほぼトラバースの道で20分ほどで小屋に着きました。

小屋の横には石室があって、屋根の上に布団が干されています。夏山らしい風景です。
この石室は木曽駒の大量遭難事故があったときに教訓として立てられたもので、現在登録有形文化財に指定されているそうです。

いったん木曽駒への道を選び、分岐を経て南から回り込むようにして将棊頭山を目指します。頂上にはすでに多くの登山者がいます。

将棊頭山が昔からずっと頭にあったのは、山岳雑誌の写真を見て印象的だったからです。それはハイマツを前面にした写真でした。私の写真の腕では下の写真が精一杯でした(笑)

すぐに頂上に着きました。

木曽駒の稜線です。夏山だ〜
中央アルプスって横から眺めることが多いのであまり気づきませんが、南北に伸びるこの稜線を見るととても雄大で縦走しがいのある山域だなあと思います。木曽駒まで足を伸ばしたくなりますよね。

木曽駒ケ岳は冬にしか行った事がありません。その時に宝剣岳に登ったはずですが、なんとなくはっきりしませんので、今度無積雪期にのんびり登りに来てもいいなあ。テント泊で、ロープウェイで(笑)

ライチョウの親子に出会う 中央アルプスの個体数は順調に増えているようです
下山は「冬道」と表示されていた稜線通しに桂木場目指して戻ります。途中でライチョウの親子に会いました。中央アルプスではライチョウは絶滅したと思われていましたが、2018年に50年ぶりに確認されて以来、保護や放鳥に環境省が取り組んでいて今では120個(2024年)の個体数を確認しているということです。
頑張ってね、ライチョウさん!

登りの時に思っていた通り、あまり大きな段差がない道なので(特に後半は土のフカフカの道だった)、快適に下って桂木場に到着しました。しかし車で着替えようとシャツを脱ぐと、アブがたかってきてパニックになってしまいました。車の中にも入ってきて難儀しました。

将棊頭山というずっと頭にあった山が登れてよかったです。中央アルプスは学生時代には全く登らず、社会人いなってから冬に木曽駒、無積雪期に空木岳くらいですので、縦走もいいし、越百岳も渋くて良さそうだし、三ノ沢岳も通ぽくっていい。まだまだ知らないところがあります。
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