
国道365号線から右折して、ウッディパル余呉を通り過ぎてしばらくして上丹生の集落に近づくと、目の前に三角形の秀麗な山が見えてくる。それが七々頭ヶ岳(ななづがだけ)です。標高693mと決して高くはありませんが「丹生富士」とも呼ばれていて、関西百名山にも選ばれている山です。山頂には西林寺の観音堂があり、村人が山に登って集う年中行事があるそうです。
草川啓三さんの「雪山を愉しむ 関西からの日帰り雪山登山」の文章を借りると、「ちょうどいい」雪山なのです。
積雪期に登るに適度なボリュームの山で、雪が締まった頃には少し物足りないが、上丹生、菅並の両コースを周回すると、新雪期の日帰りの山としては手頃なスケールとなる。
アクセスはマイカーですと上丹生の橋を渡った登山口横に駐車スペースがあります。
私は例によって公共交通を利用してみました。JR木之本駅に9時31分発の長浜市のコミュニティバス(余呉バス)に乗って10時前に上丹生(かみにゅう)に到着。450円。
復路は菅並(すがなみ)を13時半に出るバスに乗り木之本に戻りました。650円。15時38分と17時45分のバスだと余呉駅行きとなります。バスは小銭を用意しておく方がいいでしょう。基本的に両替はできないと思っておいたほうがいいです。
下山後のお楽しみとして、木之本地蔵にお参りし、北国街道をぶらりとするのがオススメです。酒蔵や名物パンや和菓子など、お土産を買ったりするとより充実した山旅になること間違いなしです。
■湖北・七々頭ヶ岳 2026/1/9 実歩行タイム
上丹生(9:55/11:50)七々頭ヶ岳山頂(12:20/13:29)菅並
上丹生から七々頭ヶ岳へ 雪はだんだん深く…

コミュニティバスに乗って上丹生に到着。上丹生からは七々頭ヶ岳の姿を仰ぐことができます。三角錐の均整のとれた山容は確かに「丹生富士」の名前にふさわしい。この第一印象だけでワクワクしてきます。
高時川を渡ると、駐車場があります。右側に登山口の案内があります。川沿いに歩いてすぐに山道となりました。最初は雪がなくて、落ち葉を踏みしめながらの急登です。所々に丁石があります。

やがて雪が出てきて「よかった」と一安心。雪を求めてせっかく湖北に来たのですからね。最初はかかとくらいの深さでした。湿り気のある雪ですし、キックステップをすれば沈むことがなくツボ足で十分です。

人間のトレースは見当たりませんが、鹿の足跡がずっと続いています。というか、山道を正確にトレースして、しかも頂上に向かっているのかと思うほど上へ上へと向かっています。

だんだんと雪が深くなってきました。雪の重さでブッシュが道をふさいだりしてきました。降り始めの季節ってこういうことが多いですよね。適当にかわしながらなおもツボ足で進みます。

だんだんひざ下くらいのラッセルとなりました。ワカンを持ってきているので装着しようとしたのですが、本日はシーズンインのテストを兼ねて普段より一回り大きい本番用の冬靴を履いていて、ワカンバンドのサイズがあいません。バンドの調整を試みましたが、汗をかいた身体がだんだんと寒くなってきたので、もう頂上までツボ足で行くことにします。

途中で日本海が見えました。海が近いですね〜。島のように見えるのは、若狭湾の半島ですかね。

やがて広々としたところに出て、観音堂がありました。扉が雪で動かず、戸板も一部開いていて、少しくたびれた感じです。中に置かれていた由緒書きによると、「伊香西国三十三所札所 第二十九番 七々頭嶽 西洞山 西林寺」「はるばると登れば峯の涼しさよ 七々頭嶽の庭のるり池」と書かれていました。
ネット上の情報によると、観音様は現在、上丹生の源昌寺に安置されているとのこと。また、瑠璃池には霊泉の伝説が言い伝えられているそうです。
村の舞姫の中で一番の器量良しの娘の顔にできものができ、瞬く間に全身に広がった。母親が観音様に願掛けすると、瑠璃池の水で体を洗いなさいとのお告げが。お告げの通りにすると、たちまちできものが治り、それ以来村の人たちは皮膚病には池の水をもらうとのこと。小さい子供に池の水をつける風習も残っているとか。

風もないので、お堂の前でバーナーでお湯を沸かしカップそばを食し、ワカンのバンドの調整に再度挑戦。無事調整ができて、下山はワカンを使うことができました。やっぱり沈まない。効果がわかります。

三角点は少し先にあるので、一応足を伸ばしておきます。瑠璃池は雪の下なので、探さなかったです。

菅並への下山ルートはテープ探しながらGPS、コンパスで

観音堂まで戻り、方向を北に向けて降りて行きます。上の写真は少し下りたところから見上げた写真で。若いブナが立ち並んでいます。この山は緑の時にきてもいいかもしれないなと思いました。
菅並への道はあまりはっきりしません。GPSとコンパスとジオグラフィカのルート案内と、時々現れるテープを頼りに尾根を慎重に下りていきます。高時川の対岸には横山岳がデーンとそびえています。あとでバスの運転手さんに聞くと、横山岳はやはりクマが出るそうです。花の百名山にも選ばれている山だけに、今年こそは行きたいものですが…

ルートの節目には、テープが打ってあります。ここは左に折れました。

菅並の集落が樹間の中に見えてくると、気持ちも焦ってくるのですが、尾根の末端が急でした。テープがついていたのであながち間違いではないと思うのですが、ほとんど岩場かと思うようなところで「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせながら下りました。
どうして焦っていたのかというと、13時30分のバスに間に合いそうだったからです。それを逃すと15時38分となってしまいます。

最後は少し小走りになってバス停にようやく着くと、すぐにバスがやって来ました。バッチリです。

バスの運転手さんと話をしていると「時間があるなら、木之本の地蔵さんにお参りに行ったら良い」と教えてくれました。
下山後は「眼の仏さま」木之本地蔵院へ

JR木之本駅から東に伸びる緩やかな坂道に出ると、なるほど「べんがら格子」の街並みが続いています。一目で「すごい…」
ちょうど2026年の大河ドラマが「豊臣兄弟!」で戦国時代が舞台なだけあって、長浜市は観光に力を入れているようです。街のあちこちで「戦国の聖地、長浜」の幟を見かけました。
坂道の突き当たりに、目指す木之本地蔵院がありました。眼のほとけ様、延命息災の仏様として古くから信仰を集めてきました。地蔵堂に祀られている本尊は秘仏で、境内には本尊のお写として高さ6mの地蔵尊があります。

平日の午後にも関わらず、お寺にはお参りの人が絶えません。HPによると毎年8月22日〜25日の地蔵大縁日には全国から十数万人の参詣者で賑わうとのこと。

お地蔵さんの周りをぐるっと回ってみると、足元に可愛らしいカエルの置物が積み上がっています。
「身代わり蛙の伝説」によると、境内に住む蛙は、眼の病に苦しむ人のため、自らの片方の眼をつむることで身代わりとなる願をかけ、お地蔵様に仕えているとの事。
たしかに、よくみると片方の眼をつむってる!

往時の賑わいに思いを馳せて 北国街道に名店あり!

木之本地蔵院の前を通る道は、これまた風情のある通りです。「北国(ほっこく)街道」です。滋賀と北陸、信越地方の中山道まで物資の輸送で重要な役割を果たしたところです。
牛馬市(うしまいち)も昭和の初めまで開かれ、牛や馬がこの地で売買されていました。初代土佐藩藩主の山内一豊の妻、千代はここで馬を「へそくり」の十両で買い、織田信長から一豊が褒められたとの話があるほどです。「功名が辻」の世界ですね。
酒蔵もありそうだなと、地元の人に聞くと、「七本槍」で有名な冨田酒造がありました。新酒の「限定活性にごり酒」(2,310円税込)を購入。七本槍は湖北の酒造としかイメージがなかったのですが、木之本だったのですね。知りませんでした。

さらに「つるやパン」で「サラダパン」(180円税込)を購入。

菓匠禄兵衛(かしょうろくべえ)の「家倉大納言どら焼き」(320円税込)も買いました。品のある甘さの餡で非常に美味しかったです。すぐ食べてしまったので写真はありません。すんません。

サラダパンはコッペパンの中に、たくあん漬けがマヨネーズに和えられて入っています。「たくあん?!」と一瞬思いますが、食べてみますとポリポリとした食感がやみつきになりそうで、味も全然違和感ありません。面白いなあ。

湖北の雪山を一人占めした後の、北国街道の地蔵尊信仰の探訪と、数々の美味しいものの発見。帰りのリュックは多くのお土産を買いこんでしまいました。行く前は考えもしなかった展開に、一人幸福な気持ちになりました。これだから山旅はやめられません。

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