夏が近づくと、アルプスの乾いた空気を吸いたくなります。そこでずっと頭の中にあるものの実行できなかった北アルプスの常念岳へ行くことにします。せっかくなので常念岳から蝶が岳へ縦走して上高地へ下山するプランとしました。2024年7月の山行です。
(家の者が使うということで)自家用車は使えず公共交通機関でアプローチです。
JR大糸線の穂高駅に着くと多くの人が下車するので、「あいのり」に一瞬期待が高まりますが、皆さんはツアーのようでマイクロバスに乗り込んでしまいました。残った私は一人でタクシーに。
タクシーの運転手さんによると「コロナで小屋の予約制が始まって、お客さんの絶対数が少なくなった」「天気は山頂がガスで見えない日が続いていて、この日も午前中に激しく降った」とのこと。常念岳のことを「三角さん」と呼び、「格好いいですよ」と自慢していました。(この人は絶対山に登ってるな)と思いました。
一の沢の駐車場は時間が遅いからか、数台分の空きが見えましたが、路上駐車も数台あることから、やっぱり朝は相当混むようです。タクシーは駐車場上の一の沢登山補導所まで上がることができました。6,100円でした。準備をして11時20分に出発。
山の神をすぎ、やがて一の沢沿いの道となりました。ドゥーッ、ドゥーッと大きな音をたてて流れ落ちていきます。これだけでも大きな山に来たという感じがします。
据え付けられた丸太橋で沢をいくつか渡っていきますと、沢の突き当りのところから右手に木製の階段が空に向かって伸びています。「胸突き八丁」の始まりです。
この辺り息が切れるところですが、高山植物が目を楽しませてくれます。それに第2ベンチではオコジョがちょこちょこ顔を出すのを見ることができました。初めて見ました。こんなに小さかったのですね。動画はもう少しお待ちください。
第2ベンチで「あと500メートル」、第3ベンチで「あと300メートル」の標識があって、励まされました。「そんな早く着くかなあ」と警戒しながら歩いていますと、本当に常念乗越につくことができました。予定より早いペースです。
頂上アタックを済ませた方々が次々と下りてきます。私はというと、今日はゆっくりすることにしました。明日の方が天気が良いと踏んだのです。少し横通岳側に上がり常念岳の写真を撮りました。これは行きの運転手さんに教えてもらった撮影ポイントなのですが、本当はもう少し頑張って登るのでしょうね。下の写真では頂上が写っているかどうか微妙です。
晩ご飯は尾西の「ドライカレー」とアマノフーズの「チーズ・リゾット」です。どっちも美味しかったな。焼酎は小さい紙パックを一つ持って行ったのですが、全然酔わなかった。単なる水分として補給しているように感じます。
水は胸突き八丁手前の「最後の水場」で2.5リットル汲みました。小屋では1リットル200円で売っていましたが、なんとか手持ちのぶんでやりくりすることにします。
常念といえば槍穂の展望が有名です。乗越についたときはガスっていましたが、夕方になるにつれて槍ヶ岳の大槍が姿を現しました。
小屋泊の方々も夕暮れを眺めにそぞろ出て来て写真を撮りあっています。
あの稜線で行っていないのは大キレットなんだよなあ。行くなら大縦走でやってみたいけど…
夕暮れの景色を楽しんでいたら19時をすぎていて就寝します。数時間おきに目覚めますが、その都度寝れました。夜半からは風が吹いてテントを揺らしましたが、それも大したことありません。
3時に起きてパンとコーヒーを飲んで4時に出発します。情念の斜面にはいくつもヘッドランプの光が見えました。ご来光目当ての人たちでしょう。
三股への分岐まで上がったところでご来光となりました。頂上はもうすぐです。
よく写真で見ていた頂上の祠。向こうに涸沢を囲むようにそびえている穂高連峰が見えます。雲が切れて穂高が見えたのはこの時間帯だけでした。
さてここから蝶ヶ岳です。行く手の稜線を見下ろしますと、ザレ場っぽい稜線が下まで続いています。実際には滑って転ぶようなことはありませんでした。思ったより岩がしっかりしていて浮石が少ない印象でした。
少し下がって常念岳を見上げると、なかなか立派だわ〜。男前です。
ザレ場を苦労して下って鞍部に着くと途端に樹林帯の中に突入です。湿った空気となりました。ぬかるみも多いものの、石づたいに歩いたりして浸水は避けられました。
2,592峰へ来てみるとここが高山植物のお花畑が点在するよきところでした。花の密集度は高いと思いました。ニッコウキスゲやコバイケイソウ、ハクサンフウロやマルバタケブキなど豊富で写真を撮りまくりました。
この頃になると蝶ヶ岳からの登山者とすれ違うようになったのですが、みなさん笑顔です。きっとお花のおかげかな〜。
2,592m峰から一旦下りて150mくらい登り切ると蝶槍です。蝶槍には山岳パトロールの方がいました。「常念からの登山者が意外と少ないが他にいました?」と聞かれ「先行者で一人くらいいるように見えましたが」など会話します。
甲信越は梅雨明けしたものの「北アルプス南部は北陸の影響を受けるから、北陸が梅雨明けしないとカラッとした天気にはならない」とのことでした。この日は槍穂、岳沢、常念〜大天井の3パーティでパトロールしているとのこと。ご苦労様です。
そこからは、いわゆる「蝶」という感じの稜線です。二重稜線はいい感じ。ライチョウが「ゲ、ゲー」と鳴いています。姿は見えなかったけれど元気そうです。本来は右手に槍穂の展望を見ながらの稜線散歩でしょうから、これは最高ですね。
蝶ヶ岳は高校2年の時に山岳部の仲間と登って以来、40年ぶりです。まだ登っているなんて不思議な気分です。あの時の仲間にもまた会いたいもんです。
蝶ヶ岳の三角点は蝶槍近くにあるようなのですが、なんででしょうね?経緯があるのですかね?
頂上で行動食をとってさっさと下山。昨日常念小屋でテント泊の受付をするときに2日目の行程を記入して渡すと「なかなかの頑張りですね。エスケープも頭に入れてくださいね」と言われたのが頭にあって、「油断してはいけない」と自省する気分なのです。
頂上から少し下がったところに、ここにも小さい二重稜線のところがあって、ハクサンイチゲがたくさん咲いていました。女性3人組がなにやら顔を付き合わせているので聞いてみると、クロユリがありました。なかなか出会うことができない花です。
そこからは長塀尾根を延々下っていきます。高校2年の時に「こんな登りやすい道があるのか」と感動したのですが、下りはともかく登りはやっぱり長くてしんどいと思うのですが、やっぱり若かったのでしょう。ぴょんぴょん登っていたのだと思います
11時に徳沢に到着。コースタイムでは12時半の予定だったと思うのでこれも予定より早いペース。ぴょんぴょんとは行かず、ドタバタ汗だくおっさんですが、十分でしょう。
ここのキャンプ場はいつ来ても気持ちいいですね。いつも「今度はゆっくりキャンプに」と思うのですが、せっかちでもったいながりな性格なので、実現できていません。
そこからいつもの上高地への道を歩いていたのですが、明神小屋から先は通行止めとなっていて右岸沿いの遊歩道を観光客に混じって急ぎます。
やっぱり外国人の方が多く河童橋は最高に人が多かったですし、梓川沿いに皆さん腰掛けている風は、京都の鴨川かと思いました(笑)
バスターミナルに行って13時20分発の新島々行きバスに乗ります。新島々で着替えた後、コカコーラをがぶ飲みします。うまい!
松本に着いて、駅近くの洋食店「どんぐり」へ行って、ハンバーグ定食と生ビールを飲んで、無事下山のひとりお疲れさん会です。美味しかったです。
やっぱり旅として山に登るのが楽しいですね。
■北アルプス・常念〜蝶ヶ岳〜上高地 2024/7/20~21
1 一の沢(11:20/15:00)常念乗越
2 常念乗越(4:00/5:00)常念岳(5:05/8:05)蝶ヶ岳(8:20/10:55)徳沢(11:00/12:50)上高地バスターミナル
コメントを残す