奥秩父・「笛吹川を遡る」千畳のナメ


まだまだ千畳のナメが続くよ〜
まだまだ千畳のナメが続くよ〜

笛吹川の紹介

笛吹川東沢は、甲武信ヶ岳の山梨側を流れ落ちる渓谷です。近代登山の黎明期に活躍した田部重治(たなべじゅうじ)が、大正4年に木暮理太郎らと、(たぶん)全く記録のない笛吹川を遡行しました。この山行は「笛吹川を遡る」と題した美しい紀行文となりました。日本独特の登山形態である沢登りに初めてスポットライトを当てたことから、笛吹川は沢登り発祥の地と言われているのです。

笛吹川の深淵が続き、しばらく河原歩きがないことを悟る時、田部さんの心は沈むどころか喜びで溢れるかのようです。

私たちは一たびは困ったがまた嬉しいような気がした。秩父の山(私たちの考えによる秩父の山)の美はむしろ渓谷にある。そしてこれほど壮絶な、これほど潤いを有する渓谷を、何処に見出すことができるだろうか。私たちは秩父に誇るべき一景を加えたことを喜ばずにはいられなかった。

当初は東北の沢を考えていたのですが、梅雨前線が居座っていて、少しのことで前線が上へ下へ動く様子を見ているので、東北は今回は流して関東の沢へ行くことにしました。そこで思い出したのが笛吹川です。ここから甲武信岳に登れば「いいルートだなあ」と思っての挑戦でした。結果は両門の滝の手前で撤退となりました。2022年8月の山行です。

■笛吹川東沢釜の沢 2022/8/11-12
1.西沢渓谷駐車場(9:00/11:10)ホラの貝(11:30/12:50)山の神(13:00/15:20)魚留の滝(15:30/16:15)テン場
2.テン場(6:30/11:30)西沢渓谷駐車場

田部重治の碑
田部重治の碑

西沢渓谷から入谷 積極的に沢筋を行って時間オーバー

二股の吊り橋
二股の吊り橋

1泊2日の予定で、天気も晴れマークがついている、はずだったのですが、入山直前に台風が発生したことを知リます。どうも不安定なお天気です。西沢渓谷から二股の吊橋を渡って、東沢方面へ。

河原に降り立ちます。青い空をバックに鶏冠尾根がギザギザしています。

鶏冠尾根
鶏冠尾根
笛吹川降り口-死亡事故多発の看板
笛吹川降り口-死亡事故多発の看板

パートナーは大学時代の友人です。久しぶりの沢なので2人とも手応えを確かめるかのようにどんどん沢身を進んで行きます。これが失敗だった…

F1は巻く
F1は巻いたが
積極的に行ってしまう
その後、積極的に行ってしまう

泳ぎやヘツリ、ショルダーなどを使って「わりと手強いね」などと行っているうちにどんどん時間が過ぎて行く。いつの間にか「ホラの貝」と呼ばれるゴルジュ愛好家が好むポイントに着いた。田部氏も見た青い釜だ。

笛吹川の東沢の全流がその間に圧搾され、それから流れが藍のようなすごい色に吐き出されて、大きな釜をなしている。このトンネルがどのくらい続いているだろうかが分からない。ただ暗い青い水の色が、奥深くに光っている。

ホラの貝
ホラの貝

ここだけを目的にくるライフジャケット装備のパーティーが3組もいた。ここまで彼らにつられてしまったのもあるが、明らかにやりすぎだ。

軌道修正して、ホラの貝手前からは山道に入った。元々はちゃんとした道が数十年前まであったらしいので、しっかりした道のはずなのだが、巻道が上がり過ぎているのを嫌って踏み跡に導かれ、途中で懸垂下降を強いられてしまう。

懸垂下降で沢に下りる
懸垂下降で沢に下りる

なんと山の神と言う祠のあるところに着いたのは12時50分。コースタイム1時間半のところに約4時間もかかってしまった。この分では広河原まで到達するのは無理だなあ。

山の神
山の神

笛吹川はとても綺麗な水ですが、不思議と魚影は見かけませんでした。人が入り過ぎているのだろうか?

両岸から乙女の滝、東のナメ、そして魚止の滝

そこからは河原歩きが続きます。乙女の滝や東のナメ沢、西のナメ沢をみて釜の沢の出合に到達。

乙女の滝
乙女の滝
東のナメ沢
東のナメ沢

しばらくして魚止の滝に到着。ここでパートナーの疲れもピークに来たようで、右岸の出だしの一枚岩にロープを出して引き上げます。

魚止の滝
魚止の滝

巻道を辿り、曲り滝を固定ロープに頼りながら乗り越えると、現れたのが千畳のナメです。

千畳のナメ なんと美しい一枚岩なのでしょう

千畳のナメ
千畳のナメ

「最高だぜ〜」いつか見たテレビの主人公のセリフが口をついて出てしまいました。古い…

千畳のナメが続くよ〜
千畳のナメが続くよ〜
まだまだ千畳のナメが続くよ〜
まだまだ千畳のナメが続くよ〜

さあもう16時を回りました。そろそろテン場を探さなければなりません。左岸の台地に平場を見つけてそこにツエルトを張って焚き火です。焚き火をしていたらだんだん元気が出てくるので不思議なもんです。久しぶりの再会山行なので、この間のことなど、昔のことなどを徒然と話しました。「そうだったのか〜」と言う打ち明け話もあって忘れがたい夜となりました。

雨が降って、引き返す

20時ごろから雨が降り出しました。朝まで降り続きます。通り雨なら気にしないのですが、そうでもないようなので、翌日はさっさと元来た道を引き返すことにしました。課題が残った感じですが、甲武信岳はまた別の機会を見つけて登ろう。

雨の中引き返す
雨の中引き返す

塩山温泉の宏池荘で日帰り温泉500円に入り、駅前の夢乃屋で「ほうとう」を食べました。お互いこれまでと違って、ちょっと時間ができたようで、またの山行を約束して別れます。

私は特急「かいじ」に乗って新宿への帰路につきました。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP